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離れたくないよ
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「…ばか」
「あ、ひどい」
「ばかばかばかばか」
「言い過ぎじゃない?」
「…ばか」
電車の中で、俺は真山に抗議していた。
抗議と言えるほどのものでもないけど。
ひたすら、真山に向かってばかって言ってるだけ。
「ごめんって」
「…………」
また小さく笑いながら謝ってくる真山に、いい加減こっちの身にもなってくれよ、と思う。
お前のせいで俺は、常にいっぱいいっぱいだっていうのに。
「怒った?」
「……別に」
それだけじゃない。
今の、この体勢。
車両の隅で、抱きしめられてしまっている。
ホームも車両の中も、人が少なかったのが不幸中の幸いだけど…もう、こうなってくると意味がわからない。
「ごめんね」
「っ…!!」
からの、両手でほっぺを挟まれてちゅー。
なんなんだ、こいつは。
さっきから、まったく反省していない。
男同士なんだって、本当にちゃんと理解してるのか?
「…やめろ、ばか…」
「誰も見てないから大丈夫だよ」
「そんなのわかんな…っ…」
俺の言葉を遮って、またぎゅっと抱きしめられる。
なんかもう……諦めようか。
「…藤川すき」
「え……」
突然、耳元で囁かれた声。
きゅぅっと胸が苦しくなる。
(…ずるい、そんなの……)
俺だって好きなのに。
どうしていいかわからなくなって、控えめに抱きしめ返す。
「…さっきから、意地悪してごめんね」
「…うん…」
優しく頭を撫でてくれる真山。
耳元で話すの、やめてほしいんだけどな。
「…藤川の言いたいことはわかるよ。けど」
「けど…?」
わかってくれてたのか。
ちょっとほっとして、真山の次の言葉を待った。
「……男同士って、そんなにいけないことかな」
(……あ……)
辛そうな声だった。
ズキン、と胸が痛む。
もしかして、ずっと気にしてたのかな。
「……藤川。俺じゃだめ?」
泣き出してしまいそうな、真山の声が胸を抉る。
すぐに後悔に襲われた。
俺が、あんなに拒絶したから。
「っ…ちがう……」
小さく首を振って、ぎゅっと真山に抱きつく。
さっきまで恥ずかしいと思ってたのが嘘みたいに。
泣きそうになるのを堪えて、真山の首筋に顔をうずめた。
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