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まねまね
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「……真山」
真山の真似をして、耳元に唇を寄せて囁く。
すっごい恥ずかしい。
真山って、いつもこんなことしてるのか…
「…俺、真山じゃなきゃやだよ」
精一杯の気持ちを込めて言った。
不安にさせちゃってごめんね。
声はちょっと小さくなっちゃったけど、そこは大目に見てほしい。
「……藤川……」
俺の名前を呼んで、ぎゅっと抱きついてくる真山。
いつもの意地悪で余裕な真山は、まだ戻ってきてくれなくて、少しだけ不安になる。
「…真山と手繋いだりするのが嫌なわけじゃないんだよ。恥ずかしいから、みんなの前ではしてほしくないだけで…」
現在進行系で恥ずかしい状況になってるんだけど、それは気にしたら負けだ、きっと。
今は真山を慰めるのが優先。
「…うん、ありがとう。わかってるんだけど…」
そう言った真山は、なんだか煮え切らない様子で。
首筋に寄せていた顔を離して、そっと表情を伺うと、何か考えてるみたいだった。
とりあえず、真山の頭を撫でる。
「あ」
「あ…」
そのとき、車内に響いたアナウンスに、同時に声を上げた。
もうすぐ真山の降りる駅に着いちゃう。
「…藤川、今日バイトは?」
「ない」
「じゃあ…家に来る?」
「うん、行こうかな…」
このまま別れるのはモヤモヤするし、何より真山が心配なので、次の駅で一緒に降りることになった。
そのあとも、真山は何も言ってくれないままで、俺はただ大人しく抱きしめられていた。
「藤川」
「ん?」
「公園に行かない?」
「おー」
二人で電車を降りて、真山の提案で公園にやってきた。
駅から近い場所だったけど、中途半端な時間のせいか、俺らの他に人はいない。
「何か飲む?」
「んー…」
自販機の前で立ち止まる。
何にしようか迷っていると、真山の好きな飲み物が目に入った。
「ココア」
「はい」
「え…いいの?」
「いいよ」
「ありがとう…」
真山が、ココアを買って俺にくれる。
せっかくなのでありがたく貰っておこうと思う。
「あ、真山もココア?」
「うん」
「俺の真似?」
「そうだよ。藤川の真似」
いたずらっぽく笑って、手を繋がれる。
真山の真似して、真山の好きなもの買ったのは俺なのに。
藤川が俺の真似したんだろ、みたいなツッコミを期待してた俺は、なんだか拍子抜けしてしまった。
(…ずるい、真山……)
いちいち可愛いっていうか、なんていうか…なんか本当ずるい。
でも俺はきっと、真山のこういうところが好きなんだろう。
あんまり上手く言えないけど…。
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