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策略?
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「…えっと…ちょっと整理する時間をもらってもいいですか…」
心臓がばくばく言ってるけど、なんとか声を絞り出す。
がんばれ、俺。
冷静になって、真山の言ってたセリフを、ひとつずつ思い出してみる。
『少しずつ発散してるの。今みたいに』
『…これでも、必死に抑え込んでるんだよ』
(これはつまり…せ、性欲を…ってことだよな…?)
溜まってるままだと、いつか爆発して無理やり……でも、そうなったら俺を傷付けちゃうから。
『…溢れて傷付けちゃう前に…少しでも藤川に触れて、誤魔化そうとしてるんだ』
きっと、人目を気にする余裕すらなかったんだろう。
街中で手を繋いだのも、電車の中でのキスも。
もっと俺に触れたい気持ちを、精一杯抑え込んだ結果なんだろう。
(…なんか…申し訳ないことしちゃったな…)
俺と同じで、真山もいっぱいいっぱいだったらしい。
あんなに余裕に見えた真山が、そんなこと考えてたなんて。
(なのに俺、「人前では恥ずかしいからやめて」なんて言って…)
真山の気持ちなんか、全然考えてなかった。
真山は、ずっと俺のこと気遣ってくれてたのに…。
「…藤川?」
「っ!な、なに…?」
「大丈夫?」
「あ、うん…ありがとう…」
頭を撫でてくれる手は、いつもと一緒で、ちょっと安心する。
謝らなきゃ。
「……あの、真山」
「ん?」
「…その……」
さっきの衝撃的な告白が、ぐるぐると頭を巡る。
恥ずかしくてどうにかなりそう。
「……ごめん…俺、真山がそんな風に思ってくれてるなんて、全然知らなくて…」
両想いだったと知ったあの日も、確か真山に似たようなことを言われた。
でも、あれは一緒のベッドっていう特別なシチュエーションだったし、付き合ったばっかりで気持ちも高ぶってたし…
(真山も、その場のノリで言ったのかと思ってたけど…)
本当はあの日からずっと、真山は我慢してたのかもしれない。
そう考えると申し訳なくて、恥ずかしいのも混ざって、なんか泣きそうになる。
「…藤川を傷付けるようなことはしたくないから」
そっと指を絡められて、小さく反応してしまう。
心臓は相変わらず、うるさいまま。
「せめて、人前で触ることくらいは許してほしいな」
そう言って、ちゅっと俺の指先にキスをする。
いたずらっぽく笑う表情は、いつもの真山だった。
「…え、あの……」
「だめ?」
「いや、だめじゃないけど…」
「ふふ、ありがとう」
くすくす笑ってる真山に、なんだか力が抜けてしまう。
さっきまでの、しおらしい真山は、もうどこにも見当たらない。
(なんか…上手いこと言いくるめられた気がする……)
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