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心配っていうか
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「心配してくれたわけじゃないの?それはそれで寂しいな…」
わざと寂しそうに呟く真山。
ずるい。
「…ばか。心配したに決まってんだろ……」
心配っていうか、ただのやきもちだけど。
例えば、一緒に勉強して、あいつがちゃんとできたら。
よくできましたって言って、頭撫でるのかな。
あいつが寒いって言ったら、あのブランケット貸すのかな。
この間、俺にしてくれたこと。
全部、あいつにもするの?
「ごめん、冗談。本当に何もないから」
困ったように笑いながら、そっと抱きしめられる。
電車の中だから、やめてほしいのに。
つい安心して、ちょっとだけ体を預けてしまう。
「藤川は心配しなくていいよ」
優しく頭を撫でられて、恥ずかしいのも忘れて、真山にすり寄る。
顔が熱くてどうしようもないけど、それでも。
真山のそばにいたい。
「…ごめん。降りなきゃ」
寂しそうな声が降ってくる。
あの冷たい指先が、頬を撫でる。
「また明日ね」
耳元で囁いて、真山の体が離れる。
近くのドアが開いて、冷たい風が入り込んできた。
「…っ……」
待って、と言いかけて、慌てて口を噤む。
行かないで、真山。
「…真山…っ…」
小さく名前を呼ぶと、ホームに降りた真山が振り返ってくれた。
目の前のドアが閉じていく。
微笑んだ真山の口が、ばいばい、と動いた。
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