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逃げるように
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「…あのね」
「うん」
「クラスのみんなが、真山に勉強教えてほしいって言ってた」
あれからは、真山に話しかけ続けた。
さっきのやり取りを思い出さないように。
できるだけ別のことを考えて、現在進行系の恥ずかしい状況から逃げるように。
「そう」
「クラスのみんなも、家に呼んだりするの?」
なんかヘンだ。
会話はちゃんとできるのに、頭のどこかがぼーっとする。
いつまでたっても顔が熱い。
「んー…学校で勉強教えるのはいいけど、家に呼ぶのは……」
「なんで?」
「藤川と会う時間が減っちゃいそう」
「…………」
すごい嬉しいこと言われてる気がする。
けど、ぼーっとしてよくわかんない。
真山の言葉は麻酔みたいだ。
「……やだ……」
「うん。俺もやだ」
そっと背中に手を回すと、抱きしめ返してくれる。
落ち着くために深く呼吸すると、真山の匂いが胸いっぱいに広がって、鼓動が速くなった。
「…真山」
「ん?」
「藤川は真山に特別扱いされてるって、誰かが言ってた」
「うん」
「特別扱い?」
「そうだよ」
そうなのか、とぼんやり思う。
真山の胸の中から見る景色は、同じ部屋なのに、この間と違って見えた。
ふと、部屋にある鏡に、自分たちが映ってるのが目に入る。
お互いに抱き合ってる腕。
真山と付き合ったらこんな感じなんだろうな、と、なんとなく考えた。
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