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あーんは?
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(せめて、からかわれないように対等な立場になれれば、弟ポジションから脱却できんのかな……)
でも、からかわれないようにするってことはつまり、真山に触られても平常心でいなきゃいけないわけで。
真山が、自分のケーキを一口すくったかと思うと、フォークはみるみるうちに俺の口元に近づいてきた。
「あーん」
「…な…っ…!」
無理だ。
平常心なんて。
「じ、自分で食えるから!」
「知ってるよ。俺が食べさせたいだけ」
「はぁ…!?」
心臓が激しく鼓動する。
さらっと何を言ってるんだ、こいつは。
顔が熱くなって、真山の顔を見れなくなる。
「ほら、あーん」
「…う……」
わかってる。
こうなったらもう、いくら自分でできるって言っても無駄なんだ。
恥ずかしがる俺を見るまで、真山は引いてくれない。
(落ち着け、俺…)
できるだけ呼吸を整える。
こんなシチュエーション恋人みたい、と思っちゃうから恥ずかしいんだ。
真山は俺を弟としか思ってないんだから、俺もそう思えばいいんだ。
(…弟、俺は弟。……よし)
意を決して真山を見る。
微笑んで俺を見つめる真山と、目が合った。
「…っ……!」
だめだ。
ちょっと落ち着いてた心臓が、また早鐘を打ち始める。
なんでこんなに恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだろう、と考えて、泣きたくなってくる。
「…藤川?」
「………?」
「あーんは?」
「…………」
真山のばか。
なんでそんなに意地悪なの。
ばか。
「…ふふ、いいこだね」
結局、ぎゅっと目をつぶって口を開けた。
フォークの感触のあと、ケーキの食感が広がるけど、味なんてわからない。
いっぱいいっぱいな俺の頬を撫でて、真山は嬉しそうだ。
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