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それぞれの幸せ
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「美味しい?」
「…ん……」
よくわからない。
顔が熱い。
適当にこくん、と頷くと、真山が満足そうに笑った。
「ほっぺ真っ赤だよ」
「…うるさい……」
真山のせいなのに。
目を逸らして、ぱたぱたと手で顔を扇いでいると、頬に冷たいものが触れた。
「…っ…!?」
驚いて見ると、俺の頬に触れている真山。
あの冷たい指先が、じんわりと頬を冷やしていく。
「ごめんね。でも可愛かったよ」
「……ばーか」
いちいちそういうこと言わなくていいんだよ。
そっと頬を撫でられて、また顔が熱くなるのがわかる。
真山の手は冷たくて気持ちいいけど、触れられて顔が熱くなっちゃったら意味ない。
離してもらおうかどうしようか考えていると、まだ手を付けてないケーキが目に入った。
「…もういいから、食おうぜ」
「そうだね」
くすくす笑いながら、手を離す真山。
ちょっと迷ってから、フルーツのケーキから食べ始める。
今さらだけど、真山といると緊張しっぱなしだ。
それでもさっきよりは落ち着いたのか、ケーキの味はわかるようになっていた。
(……おいしい)
紅茶もおいしいし、すげー幸せだ。
黙々とケーキを頬張っていると、真山が俺を見つめているのに気付く。
「な…なに?」
「なんでもない」
くすくす笑いながら俺を眺める真山。
絶対なんでもなくねぇじゃん。
「…どうせまた、人の顔見て笑ってたんだろ」
「そんなことな……あー…まぁ、間違ってはないけど…」
「…………」
なんでそこで受け入れちゃうの。
今、そんなことないよって言ってくれると思ってたのに。
「バカにしてるわけじゃないぞ?」
「…じゃあなんだよ」
「嬉しそうな藤川を見てると、なんか…こっちまで幸せになる」
本当に幸せそうに笑う真山。
きゅぅっと、胸が苦しくなる。
「……あっそ」
小さく零して、真山から目を逸らした。
もしも今、本当の気持ちを伝えたら。
「真山のことが好きなんだ」って言ったら。
言えたら。
(……ばか。ずるい……)
この胸の痛みは消えるのかな、と考えて、すぐに思考を追い出した。
言えるわけない。
真山の中ではきっと、俺は恋愛対象じゃないから。
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