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天然って怖いね
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「…おねだりが上手だね」
俺にしか聞こえないくらいの小さな声が、耳元で囁かれた。
思わず、ぴくんと震える。
「なっ…な…!?」
慌てて耳を押さえて、ばっと真山から体を離す。
顔は見えてなかったけど、意地悪な笑みを浮かべながら囁く真山が簡単に想像できて、なんだかヘンな気分になる。
(ほんと、すぐ耳に何かしてくるんだから…)
ざわつく観衆を無視して、再びプリンを一口すくう真山。
そのまま、スプーンが俺の口元に迫る。
「あーん」
あぁもう、誰かがさっき「真山エロい」とか言ったせいで。
真山の指先が、唇の隙間からほんの少し覗く舌が、ひどく艶かしく見える。
「…う……」
ドキッとして、慌てて目を閉じてから、大きく口を開けた。
プラスチックのスプーンの感触と、クリームとプリンの甘み。
周りからは、また女子みたいな歓声が上がる。
ゆっくりと目を開けると、真山と目が合った。
「美味しい?」
「う、うん……」
短く答えると、満足そうに笑って、優しく頬を撫でられた。
今日は、ほっぺ触られることが多いなぁ、と思っていると、親指がそのまま唇に触れる。
「……!?」
驚いて何もできないでいると、その感触を確かめるように、指先は唇の上をなぞっていった。
本当に窮地に立たされたとき、人間は、一周まわって冷静になるんだと思う。
とにかく顔も体も熱くて、頭が沸騰してしまうんじゃないかと、他人事のように考えた。
「…ごめん、ついちゃった」
困ったように笑う真山。
ついちゃったって何が?と考えていると、ようやく俺の顔から手が離れた。
そのまま、自分の指についたクリームを舐める。
それが、ついさっきまで俺の唇についていたクリームだと、理解するのに数秒。
「…っひゃぁぁあああ!!」
「エロい!真山エロい!」
「うわぁぁもうやだぁー!!」
俺とほぼ同じタイミングで理解したんだろう、みんなが一斉に叫び出す。
クラス中の非リア充が、いや、リア充なはずのヤツらでさえも。
(…何、この地獄絵図……)
うるせぇし、しぬほど恥ずかしいし、なんかもうぐっちゃぐちゃだ。
今すぐ家に帰りたい。
「ああああもう藤川爆発しろ!」
「嫌いだわー藤川」
「もう絶交だよ絶交」
「しね藤川」
これでもかってくらいの罵詈雑言を浴びせられる俺。
毒舌すぎて、みんな林になっちゃったんじゃないかと錯覚するほどだ。
騒ぎを聞きつけて、他のクラスのヤツらまで集まってきてしまって、教室はいよいよパニックになった。
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