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うるさい
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「藤川ー…」
「よしよし」
成宮をなでなでしてあげていると、朝のチャイムが鳴った。
隣のクラスのヤツが、慌てて教室に入っていくのが見える。
「あ、予鈴」
「あーだりぃなー」
「じゃあ、藤川。俺ら先に戻ってるわ」
「あ、うん」
ホームルームが始まるまであと10分。
まだ荷物も持ったままなのにな、と思いながら、未だに泣いてる成宮を慰める。
「…あのね」
「ん?」
急に静かになった廊下。
成宮が、俺に抱きついたまま話し始めた。
「藤川が昨日、みんなにからかわれたって聞いて、すげー心配で…」
「うん、ありがとう」
「悪ノリすんじゃん、あいつら」
「うん」
「林も、すぐ意地悪なこと言うし」
「うん」
「それが原因で、明日から学校来なくなっちゃったらどうしようって思って」
「うん」
「…お前、電話ぐらい出ろよ」
「…ごめん」
「…すげー心配したんだからな…」
「うん。ありがとう、成宮」
平静を装って答えるけど、内心ヘンな感じになっている。
なんで成宮に改まってこんな…すげー恥ずかしいんだけど。
「…でも、元気そうで安心した」
「うん…ごめんな、心配かけて。今度なんか奢るからさ」
「ラーメン」
「っ…わかった、ラーメンな」
「なんで笑ったの今!?」
「何でもねぇよ」
「嘘じゃん!ぜってー何でもなくねぇじゃん!」
「うるせぇな、何でもねぇって言ってんだろ」
単純すぎて、ちょっと可愛いとか思っちゃったんだけど…
んなこと言えるかバカ。
「…今日は優しいと思ってたのに…いつもの藤川になっちゃった…」
「いつもは優しくないみたいな言い方やめろ」
「いつも優しくないじゃん!鋭いツッコミしてくるじゃん!」
「だから、それはお前がボケなきゃいい話で…」
「あぁー!英語の課題やってない!」
「…………」
人の話聞けよ、くそ。
どいつもこいつもバカにしやがって…
「ちょっと、クラスのヤツに見せてもらってくる!じゃあね藤川!」
「おぅ…」
「なんだよ、俺がいないと寂しいの?好きだよ?」
「うるせぇな、俺は好きじゃねぇよ…」
「好きじゃないの!?ショックなんだけど…」
「めんどくせぇなお前!さっさと行けよ」
「ばーかばーか!」
拗ねたように捨てゼリフを吐いて、やっと俺から離れる成宮。
自分の教室に戻る途中で、ぱっと俺を振り返った。
「今日いっしょに帰ろー?」
「はぁ?」
「真山ばっかじゃなくて、たまには俺にも構えよな!」
なんだよ、それ。
やっぱりちょっと可愛いと思ってしまう自分が悔しい。
「約束だからな!」
「わかったから、早く行けよ」
「おー!また後でねー!」
嬉しそうに笑いながら、ぶんぶんと俺に手を振る。
さっきまで、あんなに泣いてたのに。
(…仕方ないから、今日は一緒に帰ってやるか)
バカで、うざくて、うるさいけど。
なんだかんだで可愛いヤツだ。
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