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悪魔のお誘い
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「あ?」
「…………」
ショッピングセンターを出て、そのまま駅に向かっていると、正面から歩いてくる雅と目が合った。
驚きすぎて声が出ない。
「よく会うな、おチビさん」
「…うるせぇよ…」
最悪。
昨日も会ったばっかりなのに、なんでこんなに頻繁に会うの。
俺、何か悪いことしたかな…。
「お買い物?」
「お前には関係ねぇだろ」
なんだよ、お買い物って。
なめてんのかこいつ。
「冷たいなー、おチビさん」
「その呼び方やめろ」
「なんでだよ。本当のことじゃん」
「…………」
くっそムカつく。
お前からしたら、大抵の人間は自分より背低いだろうが。
「今から帰んの?」
「…急いでるから。じゃあな」
「待てよ」
すれ違いざまに手を掴まれて、仕方なく振り返る。
なんでこんなに顔が整ってんだよ、しね。
「今日はバイト帰りじゃないんだろ?」
「だったらなんだよ」
「まだ終電まで時間あんじゃん」
「は?」
「俺ヒマだから、ちょっと遊んでよ」
「…………」
言ってることの意味がわからない。
急いでるって言ってんのに。
「なんで俺がお前と遊ばなきゃいけないんだよ」
「俺がヒマだって言ってんじゃん」
「はぁ…!?お前、自分がいつも世界の中心だと思ったら大間違いだぞ?」
「なんでそんな拒否んの」
「俺は急いでんの!聞こえなかったのか?」
「いいじゃん、ちょっとくらい」
「やだよ、離せ」
「何か奢るから」
「いらねぇって」
「じゃあ、どうしたら遊んでくれんの」
「遊ばねぇって言ってんだろ」
「ちょっとだけ」
「離せ」
「やだ」
「しね」
「ぁあ?」
怖えぇんだよ、睨むんじゃねぇよくそ。
なんでそんな目力すごいの、悪魔なの?
「……30分な」
このまま不毛なやりとりを続けるよりは、こいつの要求を聞いて、とっとと別れたほうが早い気がする。
そう思って呟くと、雅の視線から、ほんの少し殺気が薄れた。
「短くね?」
「うるせぇよ、急いでるっつってんだろ。文句言うな」
「…まぁいいけど」
なんで上からなんだよ、ムカつくな。
とか、面と向かって言えないからもう泣きたい。
俺、やっぱヘタレなのかな……
「何する?」
「何もしたくねぇよ…」
寒いし、こいつと話しただけで疲れたし、マジで何もしたくない。
こいつと楽しい時間を過ごせる気がしない。
「じゃあ、俺が適当に決めるわ」
「…あっそ」
一緒に歩くのすら嫌だけど仕方ない。
なんでこんなでかいの。
ていうか、こいつと友達だと思われたくない。
(早く時間たたねぇかな…)
一秒でも早く、家に帰って楓に会いたい。
それだけを考えながら、雅と少し離れて歩いた。
夕日に染まる道は、嫌味かってくらい綺麗で、どこまでも俺の気持ちを逆撫でする。
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