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さよなら
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「…え……」
頭の中が真っ白になった。
何が起きてるの?
「お前にとって、舜が本当にただの友達なら…あいつじゃなくて、俺を選んでよ」
耳元で声がする。
いつもなら、この声は真山のはずなのに。
選ぶって何を?雅を?
「…っ……」
何か言わなきゃ。
そう思って口を開いたけど、上手く声が出ない。
途端に恐怖が膨れ上がる。
「…や、め…っ……」
怖い。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
全身に鳥肌がたって、涙が出そうになる。
押し返そうとしたけど、腕に力が入らない。
まったく抵抗できないんだと、嫌でもわかってしまった。
「…っ…はなして…」
それだけ言うのが、精一杯だった。
堪えきれなくて涙が溢れると、少しだけ腕の力が緩む。
「…なんで泣くんだよ」
困ったような雅の声。
まだ声を出せないままでいると、突然、俺のポケットの中の携帯が鳴り出した。
(…この曲……)
楓の好きな歌だ。
そんな設定した覚えないけど、たぶん俺の知らないうちに楓がいたずらしたんだろう。
ほんの少しだけ、頭が冷静になった。
「…っ、て…!」
呆気にとられたままの雅を、ドン、と突き飛ばす。
そのまま、近くにあった荷物を掴んで走り出した。
「なっ…待てよ!」
雅の呼び止める声が聞こえたけど、振り返らずに夢中で走る。
いつの間にか、辺りは真っ暗だ。
改札に飛び込んで乗ったのは、家とは反対方向の電車。
一秒でも早く、真山に会いたかった。
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