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一緒に寝る理由
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「はい」
「ありがとう…」
あのあと真山は、俺が使うための枕を用意してくれた。
俺は、さっきの壁際に寝転んだ状態から、まったく動いてないけど…着々と寝る準備が進むにつれて、緊張が増していく。
「はい、毛布」
「え?何これ、でかくない?」
「一枚の毛布を二人で使ったほうが暖かいかなって」
「はぁ…!?」
「あとは、くっついて寝ればたぶん寒くないよ」
「…………」
もういい、もう知らない。
こうなったらもう、たぶん何を言っても無駄だ。
(よし、無になろう。もう俺は何も考えない)
何かを悟りそうな勢いで無になろう…そう覚悟を決めていると、きれいに重ねられた布団の中に、真山が潜り込んできた。
メガネを外して、俺の隣に寝そべる。
(…かっこいい……)
いつもと違う姿に、心臓が速くなる。
ちらっと視界に入っただけで、すぐに目を逸らしてしまうのは、単に恥ずかしいからってだけじゃない。
見るのがもったいない、と思ってしまう。
(重症だよな、完全に…)
たぶん今の俺なら、真山がどこで何をしてても、かっこいいとか可愛いって思っちゃうんだろうな。
恋は盲目って、こういうことを言うんだろう。
こんなに人を好きになったことないから、どうしていいのかわからない。
「…藤川」
「…はい…」
やべぇ、俺ぜんぜん無になれてない、と思っていたら、真山に名前を呼ばれた。
恐る恐る顔を見ると、幸せそうに微笑んでる真山。
(…っ……!)
どくん、と心臓が跳ねると同時に、無になるなんて無理だと悟った。
何も考えないなんて…そんなことできるわけねぇだろくそ、と、数分前の自分に心の中で悪態をつく。
「こっち」
「え?」
そっと体を抱きしめられて、真山の腕の中に収まる。
頭が真っ白になった。
「こうすれば、少しは暖かい?」
「……えっ、と……」
だめだ、やばい。
何も考えられない。
想像以上に恥ずかしくて、ただただ混乱する。
「…藤川?大丈夫?」
大丈夫じゃない。
心臓が、痛いくらい速く脈打ってる。
「…あ、あのっ…さすがに、これは…」
しんじゃいそうだからやめてほしい。
本気でそう思ってるのに、真山は涼しい顔をしてた。
さっきの緊張は?
俺と一緒じゃなかったのか?
「…ねぇ、藤川」
「っ…!!」
突然、ぎゅっと俺を抱きしめる真山。
意識が飛んでしまうんじゃないかとさえ思った。
苦しくて、頭がくらくらして、呼吸すら上手くできなくなる。
「こうでもしないと…藤川は、また雅のこと考えるでしょう?」
「…え……」
雅のこと。
いま思い出したってことはつまり、それまでは忘れてたってことだ。
とにかく、この状況を乗り切るのに精いっぱいで。
「…今日はもう、何も考えなくていいんだよ。藤川が気に病む必要はないし、明日になれば全部わかる。だから……」
(……そういうことだったのか)
真山は、わざと俺を緊張させるような言動をとってたらしい。
俺が必要以上に悩まなくてもいいように、真山のことだけで頭がいっぱいになるように。
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