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かっこいい大人
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中学2年、夏の匂いを運ぶ風がそよそよと流れる六月に俺は綺月さんと出会った
「おーい!車もいねーし早く来いよ、聖夜」
「バーカ。俺は善良な模範市民なんだからルールは守るんだよ」
信号が赤になり走って渡って行った仲間達を俺は反対側の道から青信号になるのを待ちながら答える
「ぶはっ、聖夜のどこが善良な模範市民だよー!」
「お前の見た目じゃ善良じゃなくて不良だろ?」
俺の言葉に仲間達が腹を抱えて笑い出した
あいつらが言ってる事はわかる
生まれながらにして明るい金髪に耳に空いたピアス、制服は着崩して、それに何よりとっくに今は授業も始まっているのにも関わらず俺達はまだ登校もしていない
いわゆる善良な市民には加えて貰えないようなはじかれ者だ
未だケタケタ笑っている仲間達にいらいらが募り文句を言おうとした時俺の横からクスクスと消え入りそうな笑い声が聞こえる
「あ?何笑ってんだよ」
仲間にぶつけようとした怒りがそのまま隣の笑い声の主に向けられた
俺のイライラとした声にハッとしたそいつは笑うのを辞めて口を抑える
その笑い声の主を見たとき一際強い風が俺とそいつのあいだに吹き乱れた
六月の眩しいキラキラとした日差しがそいつの黒いサラサラな髪を撫でる
黒を際立たせる真っ白な肌は光をもっと輝かせるように透明感に溢れていた
そして何より整った綺麗な顔で優しく微笑んでいるその笑顔に胸が熱くなる
ドクドクと音を鳴らして速まる鼓動に
じわじわと熱を持ち出した自分の体
目の前に居るスーツを着た若く綺麗な男に目が離せなかった
「笑ってしまってごめんね?」
「……………あ、いや」
「善良な模範市民…かっこいいなって思ってね、私も見習わなきゃ」
そう言った男はさっきの優しい笑顔とは違うどこか少し翻弄するかの様に笑いかける
その笑顔に拍車をかけたように目眩を起こしそうになった
――なんでこんなに心臓が早いんだ
さっきよりもうんと早く脈打つ音を聞いていると男が口を開く
「…あ、青になったよ、ふふっじゃあね善良な模範市民君」
「…………」
男はにっこりと微笑み俺に手をふると横を通り抜けていく
ふわっと優しい石鹸の香りが漂った
「…………いやまさか」
胸によぎるひとつの考えに俺はぎゅうっと締め付けられて甘く痛む胸を抑えながら脳裏に浮かぶさっきの笑顔を思い出していた
「おーい!聖夜、何してんだ!」
「………悪い、今行く」
仲間のかけ声に意識を戻した俺は前を楽しそうに歩いている仲間の後ろをぼんやりとしながらついていった
それから一日中頭の中にはあの綺麗な黒髪の男が浮かんで消えなかった
眩しい照りつける太陽の中、涼しげな雰囲気を漂わせて背筋を伸ばし姿勢よく立っていた姿が離れない
かっこいいっていうよりは綺麗の方が似合うような男だった
ずっと胸がくすぐったくて堪らない
あの優しい笑顔を見るたび胸がぎゅって締め付けられる
またあの笑顔を見たいと迄思った
シュワシュワと炭酸のようにキラキラとして弾かれるこの気持ちに胸が躍る
「……俺初めて惚れたかも」
勘違いだと一日中否定していた気持ちを言葉にしたら体中で高まった
そうか、俺はあの人に一目惚れしたんだ
何気ない一日の中、いつもと変わらない味気ない世界に太陽の木漏れ日のようにキラキラとした光が溢れる
中学2年の時、俺は道端で出会った男に初恋をしてしまった
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