アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
伝わるまで
-
けたたましく鳴り出す心臓の音と
震える身体で歩き出す
本当に何をしているんだろうか
「…先生馬鹿だな」
「…………っ」
真っ赤な顔をして未だそこに居る先生を力強く抱きしめた
「………ほんと…俺もあんたも馬鹿だよ」
「………」
「なあ、なんで消えなかった?本当はどう思ってるんだ?」
「…………」
「……まあいいや……先生、キスさせて」
答えよりも早く、一秒でも早く
今は先生にキスがしたくて堪らなかった
黙り込む先生をもう一度強く抱きしめ腰を曲げると先生の唇に触れるだけのキスをした
熱く潤む先生の瞳に吸い寄せられてまたキスをする
何度も何度も角度を変えて、それから深くキスをした
くちゅっと粘着質な音が立ち
先生の手が俺の背中に回ってきたとき階段を駆け下りる音と先生の名前を呼ぶ声が聞こえる
「七聖先生!」
ビクッと先生が体を揺らし現実に戻るかのように俺を引き離そうとするがそれを拒む
この声、さっきの数学教師か
先生に笑いかけられた時も腕を引かれた時も俺を見上げてきた時もあいつ少し先生を意識していた
それに先生と仲良くしている姿を見せつけられて本当は嫉妬していた俺は尚更離したくなくて堪らない
「ンッ!ふぅ……っ…んっ」
「七聖先生…?おかしいな…どこだ…」
階段をおりきり同じフロアで数学教師がぼやいている
その声を聞いた途端本気で先生が俺から離れようとするが俺も反抗して壁に押し付けた
「七聖先生…?」
キュッと足音が近づいてくる
「そこに居るんですか?」
廊下を歩く靴の音が響き薄暗い階段下を数学教師がのぞき込んできた
「…七聖先生…?」
「…っ……ど、どうしました?!」
「あ、やはりここに……こんなところで何を?」
「月乃君の悩みを聞いていまして…前々から時間が合えばと約束をしていたのですが私と彼の時間がうまく合わなくて」
「月乃は生徒会の会長だから尚更悩みも多いんでしょうね」
真っ赤な顔をして平然を保つ先生と、
今さっきまで俺達がここで何をしていたか知らずに間に受ける数学教師の会話を聞いて何だか笑えた
そのまま数学教師は先生と話すと先に職員室に戻ると行って帰っていく
また二人になった俺はもう一度先生にキスをしようと顔を近づけた時頬に鋭い痛みが走った
ぱしん――
空気を裂く音と肌が叩かれる音
ジンジンと痛む頬に俺を睨みあげている先生と震えているその手のひら
今、先生に殴られたんだと分かった
「………」
「月乃君、何を考えてるんですか…」
「…は?」
「もし…もし今あのまま見つかりでもしたら…」
「……構わない」
「へ?」
「俺は…構わない………それだけ先生が好きだから、俺は構わない…もし先生に皺寄せが行きそうになったって俺が手を出したっていう…先生の事ならきっと皆信じるだろうし、俺だけの責任で済む」
「あなたは……っ!!」
俺の言葉に先生がみるみるうち悲しい顔をしていく
「………もう、触らないでください」
「へ…?」
「そんな考えなら、私にはもう二度と触らないでと言っているんです」
「な…んで」
「……わからないんですか?貴方は生徒で私は教師です…教師は生徒を守るためにここで先生と言う名の役目を受けおっているのに……なのに貴方は………」
「……それって」
「…………」
「なあ………それってじゃあ…さっき俺の前から消えなかったのも…俺を受け入れたのもやっぱり教師としてか?」
「………っ」
また黙り込む先生に心臓が捻りつぶされる気がした
一瞬もしかしたらって夢を見た俺が馬鹿みたいだ
先生ももしかしたらなんて期待して舞い上がって馬鹿みたいだ
やっぱり教師だから俺を受け入れていたってだけで、この人がもし教師なんて責任を果たそうとしなければ俺はとうの昔に拒否られていたって事だろ?
もうそれって振られてるじゃねーか
とっくに俺は振られてるじゃねーか………
「………先生答えろよ」
「……っ…とにかく…そんな考えならもう二度と私に触れないで下さい……そんな…気持ちなら…」
「……………」
ぐっと俯く先生からゆっくり離れる
本当………初めてはっきりと断られたことよりも
やっぱり教師としてだった事に胸が痛くて堪らなかった
「…………わかった」
「……」
「もう二度と触らない」
「え?」
「………色々と…すみませんでした…取り返しのつかないことして…許せないだろうけど……俺の事本気で憎くて堪らなかったら…責任取るから……」
「え………つ、月乃君…?」
「……もう…先生には触れない…………やっとはっきり言ってくれて…ありがとう…お陰で目が覚めた…………本当…ごめんな先生」
深く深く頭を下げる
謝って許されることじゃないけど
でも謝る事しかできなかった
そんな事実にもまた胸が痛くて堪らなかった
消せない傷を負わせてただ謝るしかできない
そんな事しかできないで
俺は先生に手を出したんだ
それも先生の真っ直ぐな心と体を踏みにじって汚した
俺は取り返しのつかないことしてきたんだ
やっと何かのほとぼりから覚めたかのように身体も頭もすっと冷えていく
顔をあげて先生の目を見てもう一度謝るとそのままそこから去った
何かを言いたげな面持ちをしていたが
きっと先生のことだから
俺が傷ついたとでも思って何か声をかけようとしたんだろう
………馬鹿だな先生
俺も………本当に馬鹿だ…………
本当………救いようがなくて腹が立つほど………
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 57