アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
本当は
-
◇◇◇◇◇
あの日から先生とすれ違うことがあっても目を合わすこともしなかった
生徒会の仕事でどうしても用事がある時は他の誰かに代わって貰うか一緒に来てもらう
気にしてしまえばとことん引きずるだろうから見ないように先生の存在に気づかないようにして先生を俺の中から消した
俺がしっかり吹っ切れるまではそうするしかなかった
お陰で1ヶ月が過ぎようとしていた頃には無理矢理塞ぎこんだおかげで先生を見ても余り苦しくなる事が減る
失恋していつまでもダラダラ引きずる男って思われるのも嫌だったから
そんなある日文化祭も間近に迫り後一週間という頃、その準備で生徒会は倍の仕事量に増えていた
そのせいでなのか文化祭当日の保健室の事について先生の元へ行き許可を得に行かなければならないのに生徒会にいま居るのは俺と副会長のみ
副会長に頼もうかと思ったが鬼の形相で何やら書類を片付けていて頼むにも頼めない
仕方なく当日の保健室の事について話をしなきゃならないため重い足取りで先生の元へとむかった
あの日からまともに目を見ていなかった俺は
先生がどんな表情をしていたのか知らない
話す時もできるだけ目は見ずに書類に視線を落として話を進めていた
1ヶ月…………
もうそれだけ経てば俺がもう何もしないと思ってくれるだろうか
いや、そんな簡単に許されるわけが無い
グルグルと色んな気持ちが混ざり合い階段をおりようした時大きな音と下劣な笑い声が聞こえた
生徒会は別棟の一番うえにあるお陰で生徒や先生は余り近寄らない
化学室や美術室みたいな特別授業で寄るくらいしか使われないこの棟で一体何をしているのか注意をするために踵を返し音のする方へ向かった
今は準備のため放課後も皆がそれぞれ残ってはいるが騒ぎ過ぎて怪我でもされたら困る
先生の事もさっさと済ませてしまいたい俺は早歩きで音のする元へ向かい空き教室の扉をあけて息を飲んだ
数人の男子生徒の真ん中、
一人の男子生徒がうずくまり裸にされている
一瞬で何が起きているのかわかった途端に怒りが沸いた
「何してる」
全員の顔を見回し倒れ込む生徒の元へ向かう俺に気まずそうな顔をする男子生徒達
その真ん中でオレンジ色の派手なパーカーに首にはヘッドホンをさげ耳にはジャラジャラとピアスをつけた男だけは俺を見ても何も顔色を変えずニヤニヤと笑っている
――確かこいつは、綾崎怜皇(あやさきれお)
この学校で一番の不良で一番手がつけられないだとかで先生も放っておいている生徒だった
「綾崎、これはなんの遊びだ」
「へー生徒会長様って俺の事知ってんだ」
「………」
挑発するような態度と視線
俺も昔はこうだった
それを変えるきっかけをくれたのは先生だったな
カッと湧き上がる怒りを鎮めて真ん中で震えている男の元にしゃがみこみ着ていたカーディガンを被せた
「……お前、伊藤愁か」
「ひっ…っう…ひっく……ぅう」
眼鏡を付けて長い前髪で隠れている目からとめどなく涙が溢れている
「…とりあえずお前らの顔は全部わかる、名前も把握している後日話を伺うからそれまでに少しはいい言い訳でも考えておけよ。大人数でいい歳してこんな事しかできない脳みそで考えられたらの話だが」
淡々と話す俺に青ざめる奴、怒りを写す奴、いろんな奴がいたがやはり綾崎だけは何ともつまらなそうなどうでも良さそうな顔をしていた
不良グループを部屋から追い出し伊藤に服を着せてやる
引っ込み思案なのは聞いていたが虐めまで起きているのは話が違う
このまま放っておくつもりもない
「…伊藤、落ち着いたか?」
「す、すみません…」
「…………」
カチャッと眼鏡を押し上げすぐさま下をうつむき謝る
何も悪いことなどしていないのにおどおどとしている伊藤は確かに綾崎達みたいなやつのターゲットにされやすいんだろう
「お前は何か悪い事でもした訳でもないんだから謝るなよ」
「………すみません」
「ほらまた謝ってる、すみませんじゃなくてありがとうに変えたらどうだ?」
「…………ありが…と…ございます」
「ふっ、慣れる迄はそれでいいけど俺も伊藤も同じ二年だ、だから今度は敬語は無しにしろよ?」
「が、頑張ります…っ」
顔を真っ赤にしてもじもじしている伊藤が何だか小動物に見えて笑ってしまう
俺に笑われた伊藤はぶわっとさっきよりも赤く顔を染めて背の高くひょろっこい体を小さく小さく縮めていた
「悪いな、馬鹿にしてるんじゃなくて伊藤が何だか小動物に見えた」
「しょ、小動物……」
「あ…いや悪い意味じゃねえぞ?」
「会長…………喋り方………」
「あぁ、一応生徒会長としての時はあんな堅い喋り方だけど友達の前じゃ普段は荒っぽいんだ」
「…………そう…なんですか…」
「……幻滅したか?」
「いっ!いえ!驚きましたけどっ…でもそんな事ありません…寧ろ友人さんが羨ましいです…」
「…………伊藤さ、お前がいいならいつでも俺の所来いよ」
「へ?!」
「……あいつらに絡まれてどう仕様もない時は相談しに来い」
「そそそそっそんなの駄目です無理です」
「なんでだ?」
ずいっと近寄り前髪に隠れた目を見ようと顔を近づけると大袈裟なほど伊藤は退く
「あ、悪い……」
「ぼぼっ僕こそすみません…」
「……まあ、とにかくこのままでいい訳もねえし俺もこのままにしとくつもりはねえよ」
「で、でも……」
「…それに伊藤さ、ずっと一人で耐えてたんだろ?耐える忍耐力があるなら尚更だ、不良に負けねえよう力貸してやる」
「かっ会長………でも僕は弱いから…」
「馬鹿だな皆弱いんだよ伊藤、皆弱くて、皆強い。現にお前は今迄耐える強さがあったし、綾崎達は人を虐める弱い心がある…俺も…何を言っても人を傷つけた事あるしな」
「…………かいちょ…う…」
「……悪い、今のは忘れてくれ、兎に角今度からは相談しろこのままヤられっぱなしは癪だろ?」
「………」
俯く伊藤はこくんと頷いた
そんな伊藤に笑いかけ頭をぽんと撫でるとじっと気持ちよさそうに身をゆだねる伊藤はやっぱり小動物の様だった
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 57