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小さな背中
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そして教育実習から2年が経ち、
私も就職先となる学校へとエントリーをする時期に悪戯のように月乃君と出会う
最寄りの駅で電車から降りようとしたとき月乃君が同じ車両に乗っていた
まさかと思い人違いかと思ったけど紛れもなく月乃君で驚く胸はやがてドキドキ柔らかい痛みに包まれる
中学校の時よりも遥に成長して
まだ着慣れていない高校の制服に見を包んだ月乃君はかっこよくなっていた
小さかった背中は大きくなり
私よりも低かった背は高くなっていて
だけどあの頃と変わらず眼差しは真っ直ぐでいてあの日よりも月乃君の纏う空気は凛としていた
――本当にかっこよくなった
あの日の交差点での約束を思い出す
月乃君は忘れてしまっているだろうか
もう私のことなんて思い出しもしないだろうか?
あの日、駅で月乃君を見かけてから私は毎日毎日月乃君の事を思い浮かべてしまっていた
そしてあろうことか、
就職先のエントリーを月乃君の通う学校に立候補してしまったのだ
もし出来るなら彼の成長を間近で見たい
彼は覚えてなんていなくても構わない
なんとなく――
本当に何となくそんなことを考えてしまっただけなのに
何故なのか私は月乃君と同じ学校で二度は戻らない大切な学生の時間を傍で見れたらと胸を踊らせてしまったのだった
月乃君の通う学校は有名な進学校で
募集に立候補する養護教諭は山のようにいると聞かされていた為に半ば諦めていたが届いた通知は教員のテストを通過するものだった
まさか本当にこうなるだなんて夢にも思わなかった私は驚きと興奮で胸が締め付けられる
初めての養護教諭としての仕事、
自分にとって見てみたいと思った初めての男の子
特別な初めてをその場所で迎えられる事が私は死んでしまうのではと思うほど嬉しくて堪らなかった
そして半年後に就職先になる高校の前養護教諭の方と入れ替わりで赴任した日
またあの日よりも成長をして、
着慣れていなかった制服も着こなし一段と大人へと近づいた月乃君と対面したとき心臓がドキドキと高鳴り出し素直に嬉しかった
そして校長室で彼が生徒会長を努めていると聞いて驚く
本当に月乃君は中身までしっかりと成長していたんだと知って何故だか嬉しくて涙がでそうになった
あんなに小さかった彼が大きな一人の大人へと成長していく
そんな姿を見守れる教師になれたことが私は嬉しくて堪らなかった
そして嬉しさを胸に月乃君と二人学校をまわる
やっぱり月乃君は私の事は覚えていない様だったけど
だけど変わらず襟足のひょこひょことした部分は可愛くてそれだけで笑みが溢れる
校舎を回り終え保健室へと最後戻ると
月乃君が私を覚えていた事を知った
てっきり私の事は忘れていると思っていたのに、ちゃんと覚えてもらえていた事に一々喜んでしまう
あまり顔に出さないように緩む顔を隠す様に机の上を整頓しているとすぐ後ろに月乃君の体温を感じた
ドキドキと煩く高鳴り出す胸の音に自分が一番驚く
ただ近いだけなのになぜ私はこんなに緊張して意識しているのか
どうしてもっと近くに欲しいと感じるのか
そんなことを思ったとき不意に月乃君に唇を塞がれた
驚き離れようとするも力に全く動じない月乃君に対して、私の中にキスをされて嫌じゃないという不思議な感覚が生まれる
私は教師で彼は生徒で
こんな事をするためにここへ赴任したわけではないのに
それなのに気づいてしまった
あの日から会えない時間が
私の中で彼へと恋心の種になっていたことを
会えない事が水を与え、
再び会ったことで蕾をつけてしまったことを
そして彼に触れたとき花が咲いてしまったことを
それからは私の中で彼への気持ちと
教師との罪悪感がぶつかりあった
私は一体なんてことをしているのかと後悔と
このままずっと触れていたいと思う幸福感
月乃君を見ると教師であるのを忘れてしまいそうな自分の弱さが怖くて情けなくて堪らなかった
自分の事を嫌いになってしまいそうだった
そんな気持ちの繰り返しが続くある日
月乃君とぶつかり距離を取られて心の中にモヤモヤとした物が溢れかえる
このまま触れてもらえなくなるのだろうか
二度と話せないのだろうか
そもそも単に興味があっただけで
私とは違う気持ちなのだろうか?
そう思うと不安で不安で堪らなかった
私はここに何をしにやってきているのか
教師として取るべきではない行動に退職するべきかとも考えた
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