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9日目
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いつもの席に座って、光村くんがコーヒーとマフィンらしきものをケーキケースから取り出している姿を絶望の眼差しで見つめる僕。
…今日は、マフィンか。昨日は口実をつけてショートケーキを断ったけど、もう一度同じ手はつかえない。マフィン…か。口の中ぱっさぱさになるね?甘いのにね?
コーヒーで流し込んでも流し込んでも口の中に残るだろう甘さを想像するだけで鳥肌立ってきた。もはや悪魔にみえる。だんだんと近づいてくる彼。あ、ほら、やっぱマフィン。トレイの上にのってるのはマフィン。しかもその黒いぶつぶつ、チョコチップ?もう死んで?
そっ、と慣れて来た手つきでテーブルにコーヒーとマフィンを置く光村くんの両耳に光るピアスを見つけてしまった。思わず目を逸らしてしまったけど、すごくドヤ顔で髪を耳にかけてる仕草が視界の端にみえた。キミ、耳に髪かけるほど横の髪の毛ないじゃん…。ていうかそれ、そのピアス、昨日あげたやつだよね。行動がはやいよ、っていうかほんとに開けたんだ…。
なぜか店長との会話を思い出している僕、ノンケでもこんなことするのかな?僕もしかして狙われてる?気のせい?僕はどっちでもイケちゃう人だから、こういうコトされるとさぁ、なんていうか。…うん、なんていうか。
「キミ、ゲイなの?」
目線は逸らしたまま。僕の目線の先にうつるのは忌々しいチョコチップマフィン。けして光村くん、キミじゃない。だけどだいたいどんな顔をしているかわかる。不思議そうな、あの顔だろ。
「はい?」
ほらね、やっぱり。ちら、とトレイを抱きかかえてる光村くんを見ると、僕が何を言っているのか理解できていない顔をしていた。そして、沈黙。はぁ、と聞こえないぐらいの小さなため息を吐いて、煙草に手を伸ばす。尻ポケットに突っ込んでいたせいでぐちゃぐちゃになったソフトケース、赤い柄が特徴的で、メジャーな僕の煙草。ちょっと誤魔化してるみたい?これじゃ大人気ない?
「なんかこういうことされるとさ、勘違いしちゃうんだけど」
こういうこと。ケーキを毎回運んできたり、翌日にはあげたピアスを着けるために穴あけてきたり、ちょっと異常だよ。キミ。
このケーキ、きっと後で君が自腹で払ってるんでしょ?しがない学生が?ただの常連客のためだけに?
ピアスだってそう。
オシャレが好きだからなんて、理由にはならないでしょ。それだけで体に穴を開けてしまえるほど、軽い人間には見えないよ。
「はあ…」
なにが?とでもいいたそうな顔。そんな顔。理解力のない子だなぁ。それとも僕が要らんこといっちゃったかなぁ。
「…なんでもないよ。気にしないで」
気にしなくていいけど、気をつけて。
僕はキミほど子どもじゃないよ?
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