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10日目
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はやとちった、かもしれない。
家に帰って存分に反省した僕。
僕とあの子じゃ全然ちがうんだ。境遇も、生き方も、しかもあの子は若い。
きっとなんでもない『好意』の一貫で、僕が思ってるような意味なんかこれっぽっちも無かったんだろう。
あんな、不思議そうな顔をさせてしまった。混乱したような、思わず拒絶が瞳に浮かんでしまうような。
きっと純粋な恋愛をしてきたんだ、あの子は。僕とは真逆、僕とは違う。
BARで飲んでてそのままホテルへ、なんて日常茶飯事で、挙げ句の果てには店長と寝てしまったり、そこらへんの男をひっかけたり、あれ、最近男ばっかりだな。女と遊んでないな。女も好き、男も好き、いつからこうなったのか良くわからない。
何故か、店長に言われたことのある「色気のない体だな」って言葉が喉元に引っ掛かる。
骨の尖った体、僕自身に興味をもたれなかった、可哀想な体。
こんな陰気な僕と、あんなに陽気な彼じゃ、そりゃあ思考も態度も違って当たり前だよねぇ。
そりゃ、僕が振り回されても仕方ないよねぇ。
って、なんじゃそりゃ。気持ち悪。
なんのつもり? 僕。
恋愛でもしてるつもりなの? 僕。
あんなこと聞いてどうするつもりだったんだろ。もし彼が「そうですよ」なんて肯定の言葉を口にしてたら?じゃあ僕は何て言ったの?
「そう、じゃあ寝てみる?」
いやちがうな。
「うん、ありがとう」
…なにが?
「へぇ、だから僕によくしてくれるの?」
……自意識過剰すぎて!!
肯定に対する答えも用意してないまま、あんな質問をしてしまった自分を叱りつけたい。反省してる。もうあんなこと言わない。言わない。
からんころん、今日も居るだろう彼のことを考えながら、そっと店のドアを開ける。見慣れた店内、見慣れたキャラメル色の髪の毛、…ってあれ?
「マスター、あの子は?」
いつもなら目立つからすぐに分かるんだけど、あの子がいない。どこにも。
「ああ、光村ですか?今日休むって連絡があったんですよ」
……。
昨日の今日でこれはひどい。まさか、避けられた、かな。
「ふぅん。じゃあアメリカンお願いします」
「ケーキはどうしますか?」
「…はは、僕本当は甘いもの、無理なんですよ」
目を丸くしたマスターが何か言ってくる前に、「光村くんには内緒で。」と一言告げていつもの席についた。
今日は甘いお菓子はない。テーブルの上には彼と出会う前の光景があった。なんでこんなに懐かしくて、なんでこんなに物足りないのか、良くわからない。
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