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11日目
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は?今日も居ないじゃん。どういうことなの。
連日、毎日のように彼の姿をここで見ていたのに。あのキャラメル色の髪の毛が間接照明に照らされて、時々金色に光るのが、とても綺麗だと思っていたのに。
まるで僕が彼に会いたいみたいじゃないか。なにこれ?おかしいだろ、いやもう、可笑しいだろ。
完全に避けられている。
そう思うとぐるぐると頭の中をめぐるのは、この間僕が『要らないこと』を言ってしまった事実。
この席で、この場所で、「ゲイなの?」なんて、そんなこと言われたら気味悪いよね、…やっちゃったな。
違うバイトの子がアメリカンコーヒーを運んでくる。彼がこの店で働く前から働いているバイトの子、名前もしらない彼だけど、いつも一生懸命なのは見ていて良く分かる。真面目そうな顔して不真面目な彼と大違い。…って、ほらまた!光村くんのこと!
「お待たせしました」
「ありがと」
「…あ、いえ。お久しぶりです」
「え?あ、はい、お久しぶりです」
このバイトの子と話したことなんてあんまりなかったのに、突然話しかけられてビックリした。
ぺこ、とかるく頭を下げると「なにかケーキは食べますか?」と言われて苦笑が漏れる。僕はいつの間にかケーキを頼む人になってしまったみたいだ。全部彼のせいなのに。
「食えなくて。甘いもの」
「そうなんですか?!いつも光村が楽しそうにあなたの話をするから、てっきり好きなのかと思ってました」
「僕の話…?」
「はい、『あんなに怖い顔してるのに甘いもの好きなんだよ、あの人!』って。あ、すみません失礼ですよね」
申し訳なさそうな顔をして「失礼します」といって去っていくバイトくん。やっぱり彼勘違いしてたんだね、勘違いさせてしまったのは僕だけどさ。いやいや、ははは。いやいや。なんでそんな話、僕の知らないところでしてるの。ねぇ、勘違いするよ?って言ったよね?
だから楽しそうにケーキを選らんでたの?
やだなぁ、ますます断れなくなっちゃったじゃないか。…あ、いや、違うか、もう来ないかもしれないもんね。僕のこと避けてるんだから、うん、もう会えないかもしれないなぁ。
そういえば、僕、彼のフルネームも知らない。何歳なのかも、何の学生なのかも、もしかしたらフリーターかもしれないし、普段何をしているかとか、それどころか、連絡先すらも知らない。
なんにも知らない。
スマートフォンを取り出して日付を見ると、まだ4月の11日。彼と出会って、まだたったの11日しか経ってない。
ちょっとまってよ。ほんとこんなの柄じゃない。
楽しかったな、なんて。
思い返して煙草をふかすなんて。柄じゃないよ。僕。
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