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17日目
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結局「帰ろう?」といっても「まだ赤丸さんと一緒に居たいです!」とか可愛いことを言われて、バカな僕は舞い上がっちゃって。酔った男の言葉なんて信じちゃって。そして、終電を逃した。
…終電を逃した。なんてさ、今までだったらチャンスだったよね。だってスキな子が酔いつぶれて、終電を逃しちゃった、なんて、これ以上ないチャンスでしょ?襲っちゃえばいいでしょ?なにこれ?誘われてる?それともバカなの?って思っちゃうでしょ?でもね、出来なかったよね。
居酒屋から近い僕の家に連れてきて、そのまま光村くんをベットに放り投げるように転がした。…重たいよ、おばか。やましいことは何もしてない。ていうか、ノンケ相手にそんなことできるほど僕に度胸はなかった。だけど腹立たしいことに可愛い顔で、僕の部屋の僕のベットで寝られちゃ、僕だって男なんだから気が気じゃない。あーもう、あーーー!もう!一睡もできないまま、僕はソファに座って、結んでいた髪をほどく。…伸びてきたなぁ、そろそろ切らなきゃ、とか、そんなことを思いながらスマホを弄って気を紛らわせた。
寝息がすーすーと聞こえてくる。起きたらお水あげなきゃ。よかった、吐くほど酔ってはなかったみたいで。僕ってこんなに優しかったっけ。
「ほんとムカつくね、このガキ」
少しずつ、僕が僕じゃなくなっていく。事なかれ主義、無関心を貫いていたはずの僕が、今ではこんなに振り回してる。なんだか憎らしくなってくるほどに。
はあ、とため息をついて、煙草に手を伸ばしたときだった。ごそごそ、とシーツに包まってた光村くんが動きだした。むくり、とボサボサのオレンジの髪が「やっばい!俺、気失ってた!」といって飛び上がる。あ、すごい寝癖。ぴよぴよしてるよ。
「起きたか、光村くん。」
「え、もしかして赤丸さんですか!」
僕以外に誰がいるんだよ。
視線を一度だけ光村くんにむけて、すぐにスマホに戻した。さも興味なんてないよ、というように。そして思い出したかのように白々しく煙草に火を付ける僕。ちょっと、前髪邪魔だな。乱暴にかきあげると、やけに光村くんの視線を感じる。ちょっと、やめてよ、そんなに見ないでくれない。
そわそわ、と周りを見渡した光村くんは「失礼します」と一声かけて、シガレットケースを持って僕の隣に腰掛けてきた。ちょっと、なんでちょっといい匂いするのキミ。
掠れた声の光村くんが「赤丸さんがソファーで寝てたんですか?」と聞いてきたので「ベッド追い出されたからね」と意地悪をいうと、頭をがしがしと掻きながら申し訳なさそうに眉を下げた。
「えええ…ごめんなさい、朝ご飯作りますから許して下さい」
眠そうに目を擦ってる光村くん、キミねぇ…。ほんと、そんなこと言わないで?
僕の気持ち、もしかしたらバレてるんじゃないかと思ってしまうでしょ。なんでもないふり、なんでもないふり。キミにとっては親切の一つでしかないんだろうけど、僕にとってはとんでもないアクションだからね。
隣で香るキャスターの甘い匂いが、すごく落ち着かないよ。
「うち何もないよ、朝食うタイプなの?食いにいこうか」
そう声をかけて、煙草の火をもみ消した。何故か灰皿をガン見している光村くん。何をそんなに見てるの?ああ、吸殻は定期的にすてなさい、とか?
「あ、そうだ。シャワー浴びる?部屋出て右ね。」
そういってタオルを出すために立ち上がる。なぜか光村くんの顔が、見れなかった。
朝ごはんなんて食べないからなぁ、どこに連れて行けばいいんだろう。
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