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24日目
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まさか前日に誘われるとは思ってなかった。今日だったんだね、ショーって。今度、っていうから来月とかかと思ったけど、約束しちゃったし仕事休みとっちゃった。
これ、レオンくんには内緒ね。
大学までいくよ、と言ったら、「じゃあ門まで迎えにいきます!」と言った彼の言葉を信じて、レオンくんの通ってる大学に向かう。
そんなに遠く無くて良かった、青い空と、春の風と、のら猫と、のどかな雰囲気が気持ちいい。
約束の時間よりちょっと早くついちゃったけど、レオンくんに『ついたよ』とだけメールを送った。程なくして、目立つオレンジの髪が校舎の中から出てくるのが見える。レオンくんは俺に気がつくと、すごく勢いよく手を振ってこちらに走ってやってきた。
「優くーーーん!こっちですよー!」
ぶんぶん!と尻尾が見える気がする。ぱぁっと明るくなった顔、テンション、周りの人が驚いた目でレオンくんを見ている。…恥ずかしいよ!一目気にしなさい!
「行きましょう!行きましょう!」
「ちょ、離して!離してレオンくん!」
腕を引っ張ってくるレオンくん、キミ、ここ、外だからね?!
堂々とできる恋愛をしているわけじゃないんだから、って言おうと思ったけど、こんな不思議そうな顔をされたらもう何も言えない。はぁ、とため息をついて、引きずられるように会場にむかった。
七星くんという子はどの子だろうか、とキョロキョロとしていると、慌ただしくバタバタ走り回ってる男の子が一人、こちらに気づいて「あ!レオくん!」と声をかけてきた。
「七星くん!忙しそうだね?」
…この子が七星くん、らしい。サークルのパーカーを着て、スタッフバッチまでつけてるけれど、見た目は想像していたよりは、案外普通。爽やかな好青年って感じ。レオンくんが七星くんが雑談している間に、僕は信じられない光景を目の当たりにしてしまった。
なぜ?とてとてと会場内をあるいてるあのデッカい男、あの長髪、あの眠たそうな目、なぜ?
幸がいた。まぎれもなく、幸。
僕があの子を見間違えるはずがない。どうして人気モデルのお前がここにいるの?!
ぎょ、っと目を疑っていると、幸も僕に気がついたらしい。
「あ、優ちゃんだー」
なんていいながら、こってこての肩からトゲとか生えてるわけのわからない衣装を身に纏った幸が近づいてきた。
「なんで?!」
思わず大きな声がでてしまう。驚いてレオンくんを見ると「あれ?言いませんでしたっけ?」なんていってきた。聞いてないよ…!なるほど、でも辻褄が合った。幸がずっとショーが、ショーがって言ってたのはこれだったんだね。
まさかレオンくんの友達の七星くんと、幸につながりがあったとは知らなかった。幸は七星くんとそれなりに仲良く話している。…ん?仲良く?幸が?そこで僕の鋭い勘が働いてしまった。こないだ幸がイライラして悩んでいた原因って、七星くんのこと、だったみたいだね。七星くんの幸への熱視線、あーもう、火傷しちゃいそうなぐらい見つめちゃってさ。
「ねぇねぇ、優ちゃん、その人だぁれー?」
レオンくんを指さして幸は首を傾げた。この場で言っていいのか、と言葉をつまらせていると、レオンくんが「優さんの彼氏です!ついでに七星くんの友達です!っていうか、アドレス聞いてきましたよね?」と、なんとも空気の読めない発言をした。…ごめんね、幸は馬鹿だから、すぐにそういうことを忘れてしまうんだよね。
「七星くんの友達?ってことは優ちゃんの彼氏?オッケー。よろしく?」
「えっ、え?、……え?!みんな知り合い?!」
焦った様子で状況を整理しようとしている七星くんって、ほんと常識人だよねぇ。僕、とっても親近感だよ。僕だってまさか幸の悩みの元、が、レオンくんの友達だなんて思ってなかった。世界って狭いよね。
「優ちゃんはねー、俺のお兄ちゃんみたいなひとー。」
「えっ!?血はつながっていらっしゃるの?!」
「んー?血って繋がるの?」
「えっ、優くん!いつの間にKOHさんに輸血したの?!」
「ちょっとレオくん黙って。」
「ですよねー」
馬鹿にお馬鹿を組み合わせるとただのカオスになっちゃうよ。苦笑をしていると、七星くんが「あの、はじめまして、七星光といいます」と丁寧な挨拶をしてくれた。僕も「赤丸優です、大変だとおもうけど幸のことよろしくね」と言って七星くんと握手をした。いい子じゃん、七星くん。
「あ、やべぇ、KOHさん、そろそろ出番なんで」
「オッケー。じゃあ優ちゃん、彼氏くん、ばいばーい」
二人で裏に走っていく。「走りたくなーい」っていってる幸の腕を引っ張ってる七星くんを不憫に思ってしまった。なんかごめんね。
大学のショーをすこしなめていた。
すごいクオリティで行われていてビックリ。色んなモデルを呼んでいるのかな、とおもったけど、どうにも本当のモデルは幸しか呼んでないらしい。
怖いね、モデルって。テレビで見るよりも迫力あるし、なによりオーラがすごい。あんなにぼーっと歩いてるだけなのに、すごくサマになってて。肩パットのすごい衣装、あんなの幸以外の凡人が着たりしたらただのギャグだよ。
ぼお、っとその迫力に圧倒されていたら、舞台そででから七星くんが見えた。七星くんのその表情が、疑惑を確信に変える。…本当に幸のことが、好きなんだね。
そんなことをおもっていたら「もしかして、七星くんの好きな人ってKOHさんなのかなぁ」と、隣でショーを見ていたレオンくんが、ぼそっ、と呟いた。…驚いた。鈍感なキミにしては大正解だよ。
「よくわかったね、珍しい」
「やっぱり!」
僕の気持ちにはぜんぜん気づかなかったくせに、他人の気持ちには目ざといなんて。
ショーの間、人ごみに紛れてずっと繋いでいた手が、じんわりと暖かいことに幸せを感じていた。…たまには、こういうのもいいね。
ショーは続く。衣装をかえて、幸はなんどもステージに現れた。今まで大人しかったはずのレオンくんが、突然なにを思ったのか、繋いでいた手をぱっと離して、両手をあげてぶんぶんと振りはじめる。
その奇行にぎょっとしていると、
「KOHさーーーん!!!」
と大きな声で幸のことを呼んだ。ステージの真ん中でポーズをとっていた幸も、レオンくんに気づいたらしく。にこり、と微笑んで手をふって、投げキッスなんてモノを飛ばしてきた。その瞬間、会場がギャーーー!!と悲鳴にも似た歓声で湧く。…幸、お前プロだね。
魅せられた。
ショーは無事に終わった。周りの人の話題に耳をすませると、KOHの話題ばかり。すごいじゃん、人気者なんだね。
人ごみに揉まれながら会場を出る。ぽーっとした顔をしたレオンくんは「KOHさん、かっこよかったですね」と言ってきた。
「ああ、うん衣装がね」
「違いますってー!」
だってなんか、悔しいじゃないか。
すごくかっこよかった。僕の弟くんは、知らぬ間にこんなに成長してたんだと、なんだか感慨深い。
そんな話をしながら、タバコでも吸おうと尻ポケットに手をつっこんだときだった。どすっ、と背後から誰かにもたれかかられる。…。
「おーなーかーすーいーたー」
「はーなーれーてー」
こんなことしてくるのは幸しかいない。幸を適当に振り払って振り向くと、そこには七星くんもいた。ぺこり、と頭を軽くさげると、いい笑顔で「お疲れ様です!」なんて言われて拍子抜け。いまの幸の行動、ちょっとぐらい嫉妬するかと思ったんだけど。七星くんの視線はすぐに俺から離れて、幸に向く。
「今日はラーメン行こうな」
「!! 七星くんすきーー!」
>>>罪<<<
幸、お前なんって罪な男なの。七星くんの気持ち気づいてもないくせに、なんてこというんだ馬鹿。ほら、見てみ、七星くんすっごい苦笑してるし。ところでどうしてレオンくんはニヤニヤしてるの?勘違いしてる…?
「せっかくだし写真撮りません?」
いいこと思いついた!とでも言いたそうな顔で、突然道ゆく人に突然スマホを渡しだしたレオンくん。…僕、写真苦手なんだけどな。まあ、いっか、記念だし。現像してアルバムに貼ろう。
快く写真を撮ってくれるらしい人は、定番に「いちたすいちはー!」と合図をかけてくれた。
「……二」
「に!」
「にー!」
「にくー!」
>>>なぜ<<<
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