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florists' daisy 2-2
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入った途端、壁の迫る威圧感に、即座に足が止まった。
「う…わ…?!」
思わず声が出る。
「…ごめん、すごいでしょ」
ソファの脇で、桐生が苦笑いしていた。
そこは多分…リビングなのだろう。ソファもあるし、一応テーブルもある。テーブルの上には、先ほどまで桐生がそこですごしていたのだろうか、空のコーヒーカップと、開いたままの新聞が置かれていた。――それだけ見れば、普通のリビングなのだが。
問題はその周辺だった。大小さまざまな段ボール箱と、荷造り紐で括られたままの本が、所狭しと積まれている。それらの段ボール箱が、部屋に入ったとたんに感じた威圧感の正体だった。積まれた段ボール箱たちは、もちろん空ではないようで、しっかりテープで封がされている。
これらで床が塞がれた部屋は、テーブルとソファの周辺以外は、ぎりぎり人が通る程度の隙間しか出来ていない。
「うーん、と。台所と自分の部屋の荷物はなんとか動ける程度には片付けたんだけど…」
言われて、目をやる。リビングと部屋が続いている台所も、視界に入ったが…、…確かに『なんとか動ける程度』だ。
台所用の背の高いテーブルには、新聞紙に包まれたかたまりがごろごろと転がっていた。多分割れないようにと梱包されたカップやグラス類だろうと琉生は目星をつける。テーブルには椅子が3席備え付けられていたが、椅子の上も同様に小さめのダンボールや、新聞包みが積まれていた。ただ、桐生が使っている場所だけの1席ぶんだけ片付いているが、その椅子の前のテーブルも、ぎりぎり皿を2枚ほど並べるだけのスペースがあるかないか、程度しか場所が空いていない。
リビングも台所も、惨状、と言っていいだろう。引っ越してまもなくといっても、限度がある、といいたくなるくらいには、散らかっているし、荷物だらけだ。
「あー…うん、ごめんね。散らかったままで」
視線をさまよわせる琉生に、桐生が困ったようにつぶやく。
「…いえ… …そもそも、片付けのためにぼくが来たんですから」
「あ、うん。そうだったね。…本当にありがとう。ああ、ちょっと座ってて。…うーん、お茶、と言ったけど、お茶っ葉はまだ荷物から出せてないんだった。本当どこにしまったんだろう。…琉生君、コーヒーで大丈夫? ああ、コーヒーメーカーがまだないから、あいにくインスタントだけど」
「あ、はい。ええと、お構いなく」
琉生は、言われたままに指し示されたソファに座り、台所にコーヒーを淹れに向かった桐生の背中を眺め、それから部屋の段ボールを横目で眺め、ひっそりとため息をついた。
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