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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …48
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なんだか…
この空間に感化されちゃったんだろうか?
ふわふわと、気持ちが浮き立つような気がする。
祭壇に大嶋さんが立って、こちらを見た。
「では、一歩ずつこちらへお願いします」
雅治さんと顔を見合わせて、一緒に一歩を踏み出した。
顔を上げると、足元に広がる夜景が目に入った。
そのせいか、この空間が浮かんでいるような不思議な感じがして、足が少し震える。
天空のチャペル、と言う名前が、今やっとしっくり来た。
雅治さんに絡める腕に、少し力を込めた。
「バージンロードは、花嫁の一生を表していると言われています」
大嶋さんが、そう説明をする。
「その一歩一歩が、今日までの道のりなんです」
今日までの、道のり。
そうか、バージンロードにはそんな大事な意味があるから、さっき見学の時は歩かせてもらえなかったんだ。
振り返れば、雅治さんと出会ってから…
本当に密度の濃い、いろんな出来事が起こった。
それは、今もまさにそう。
雅治さんとバージンロードを歩く日が来るなんて。
一歩踏み出す毎に、これまでの思い出が蘇って胸がどんどん熱くなった。
夢の中を進むような心地で、雅治さんと一歩ずつ進む。
ドキドキ。
ドキドキ。
この先にある雅治さんとの未来を想像して、目頭が熱くなってしまう。
「こちらまで、どうぞ」
バージンロードを歩き切ると、大嶋さんに促されて、祭壇の前に立った。
「すみません。牧師ではないので真似事になるのですが、始めさせていただきます。…突然ですが、イエス・キリストは、同性愛について何も語っていません」
同性愛って…
ほんとに何を突然言いだすのかとドキッとした。
「つまり、イエス・キリストは同性愛を禁じてなどいないのです」
大嶋さんは俺たちを見てニッコリ笑った。
「聖書の解釈により、同性愛を否定する団体もありますが、弊社はそうではありません。もし、お二人が正式に結婚式を挙げる時がございましたら、弊社は盛大に歓迎いたします。…ちなみに、「信頼」「誠実」「正直」これらの言葉を聞いて、お互いにどのようなイメージを持ちますか?」
問いかけられて、雅治さんを見る。
雅治さんのこと、信頼してる。
雅治さんに対して、誠実で、正直でありたいと思う。
気持ちが通じたのか、お互い、はにかみながら頷いた。
「はい。特に、お二人のように、愛に溢れ、お互いを慈しむようなカップルは大歓迎です」
大嶋さんは、嬉しそうにそう言ってくれた。
営業するために上手いこと言ってるだけかもしれないけど、その言葉と笑顔はとても嬉しかった。
「では、小栗様。…汝はこのものを夫とし、健やかなるときも病めるときも、生涯愛し続けることを誓いますか?」
聞いたことある…有名なあのセリフだ!
「はい。誓います」
問いかけられた雅治さんは、迷いなく、返事をした。
雅治さんのその言葉に、思わず泣きそうになる。
ただの"ごっこ"なのに。
ごっこ、だけど、雅治さんにはそんな雰囲気はない。
真剣な顔をして、牧師役の大嶋さんを見ていた。
「佐藤様。汝はこのものを夫とし、健やかなるときも病めるときも、生涯愛し続けることを誓いますか?」
今度は、俺に問いかけられる。
健やかなるときも、
病めるときも…
どんなときも、どんなことがあっても、愛し続けるに決まってんじゃん!
「はい。誓います」
「では、指輪の交換をお願いします」
そう言って、大嶋さんは持っていた白い箱から宝石が入っているようなケースを取り出した。
俺たちの方に向けて、箱をパカリと開けると、中には指輪が二つ入っていた。
??
こういうのも見学者のために準備されているんだろうか?と思っていたら、雅治さんがこう言った。
「すみません。良ければ5分で良いので、二人にしていただけませんか?」
「はい。もちろん結構です。…では、私は外に控えておりますので、終わられましたらお声がけください」
何が始まるのかと俺が首を傾げている間に、大嶋さんはニコニコと笑いながら教会から出て行った。
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