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初出張 …5
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受け付けフロアから、エレベーターで3階の事務所に案内され、今回関わっているチームの方々と簡単に挨拶をした。
そこでも俺は「新人さん?かなり若いね!」と驚かれた。
おそらく25歳とは思われていない。
こう言われるのは何時ものこと。
俺はよく学生に間違えられる。
私服だと特に、居酒屋に行くと店員から身分証の提示を求められることも少なくない。
ジャニーズ系だよねと、大学の頃周りの女子に言われて何となくモテていた気もするが、男臭さを感じさせないらしい顔つきは、少し悩みだ。
クリンとした二重と長いまつげ。
「可愛い」と言われる事に対するささやかな抵抗で、髪はベリーショート。
日焼けをしても赤くなるだけですぐに元に戻るし、運動はそこそこしか出来なくて、筋肉もほとんどない貧相な身体。
はー…もっと男らしい見た目に生まれたかった。
社会人になってからは特に、若い若いと言われることが、年下だと舐められている様で嫌だった。
実際、まだペーペーの部類で、何も言い返せない立場なのがやるせない。
挨拶の後は、同じ建物の4階にあるライン生産フロアに移動した。
ここで製品を生産しているようだ。
ここの一画にあるテスト用機器にて一週間作業を行うらしい。
移動中、佐々木さんの前を歩く小栗さんをついつい観察してしまう。
165センチの俺が少し見上げるくらいの身長。
180くらいだろうか。
顔が良い上にスタイルも良いなんて、羨まし過ぎる。
何か運動してるのかな?
雰囲気は怖いけど…超絶モテそうだなぁ。
「こちらのパソコンを使用してください。」
一台のパソコンの前に着いて、小栗さんは立ち止まってそう言った。
「今回は佐藤メインでやってもらうからな」
と佐々木さんが言う。
俺はハッとして、背筋を伸ばした。
余計な事を考えてたらダメじゃんか。
初めての客先での現地作業なんだから!
お客様に迷惑をかけない様に、かつ、多くの作業を佐々木さんから学ばねばならない。
「宜しくお願いします!」
自分に気合いを入れて、差し出された椅子に腰掛け、パソコンのマウスを握った。
あれ…?
画面にはパスワード入力のウインドウが開いていた。
入れ直した気合が、萎みそうになる。
こんな事で慌てる必要はないのに、緊張のせいか少しテンパってしまう。
えーと、うん。落ち着け、俺。
小栗さんにパスワードを確認しよう。
そう思って振り返るのと同時に…
「あぁ、ごめん。」
小栗さんが俺の後ろから画面を覗き込んだ。
ちょっ、近い!
オーラが痛いくらい近い!
小栗さんは左手を俺の右肩に何気無く置き、右手をスッとだして片手でタタタッとパスワードを入力した。
わっ…滑らかな手の動き。
男らしい骨ばった感じだけどすらりと綺麗な指に見惚れた。
と言うか、肩!
肩に触れている手から小栗さんの体温を感じて、何故かドキドキした。
それと一瞬、フワッとなんだか良い香りが鼻をかすめたことに、何とも言えず心が跳ねる。
そんな動揺のせいか
「パスワードはこれです。」
と、小栗さんが差し出した付箋を
「あっ!ありがとっございますっ!」
と、俺はカミ気味で震えながら受け取った。
そんな慌てた俺を見て、小栗さんと佐々木さんは「初現地にそんなに緊張してるの?」と笑った。
うう!
恥ずかしい…俺、さっきからこの人意識し過ぎ!
ダメダメ。
相手がたとえピリピリ芸能人オーラだとしても、仕事は仕事。
それに、そんな風に見てたら相手にも失礼だ。
そう自分に喝を入れて、俺は作業に取り掛かった。
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