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【番外編】 小栗雅治の独白 23
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「あー、それはまぁ良いとして。……つかさ、前から思ってたけど、オグってさー言葉足りてる?」
「言葉?」
「特に今回は今までとは違ってオグが追っかけてる方だろ?昔の女達みたいに、食事してデートして数回ヤったら、何にも言わなくてもハイ!恋人同士!っていう風にはならないんじゃねーか?何より相手、フツーの男だろ?」
「……」
何も言えずにビールを煽って、ジョッキを空にした。
「向こうはさー、オグの気持ち知ってんの?オグは?向こうの気持ち、知ってんの?」
「……」
そう言えば、ちゃんと確かめ合った事はない。
今までの女なら…
なにも言わなくても、付き合ってる事になってたし、通じ合えてたと思う。
佐藤君とは身体は繋げたし、その時確かに好意は感じていた。
デートもしたし、お互いの部屋にも行った。
だけど…
佐藤君の好意って、俺の「好き」と同じなのだろうか。
…あれ?
佐藤君って俺の事どう思ってんの?
俺の事「好き」なら、こんなに早く心変わりしない…よな?
「…ヤベェ、自信なくなってきた」
「オーイ。…なんかオグらしくないなぁ。いつものオグなら、すぐ行動起こすじゃん?つか…そーか。今までは追っかけられる側だったからな。追っかける側に関しては初心者か…」
ヤマの言葉を反芻しながら、ビールを注文した。
追っかける、か…
「そう言えば俺、今まで告白とかした事ない」
ヤマが口に入れかけてた串を取り出した。
「……は?なにそれ?なに、その贅沢な悩み!クソ!リア充爆発しろ!!」
ヤマが焼き鳥を仇の様に頬張った。
「……俺…今まで、何を経験してきたんだろ…ダセェ…」
しばらくヤマが、焼き鳥を無言で咀嚼しながら俺を見ていた。
俺も無言で焼き鳥を頬張る。
何にせよ、佐藤君が誰と恋しようが…俺は何にも言えない。
相手が女なら。
俺には邪魔する権利はない。
「〜ん。ダサくても、今のオグ、俺は好きよ?そんなフツーの事で悩む姿も」
「…なんだそれ?」
ヤマもジョッキをあけて、新しいビールを注文した。
それからしばらく遠くを見ていたヤマが、突然ギャグをかましてきた。
「……はじめてのこいわずらい……だ〜れにも〜ナイショで〜…みたいな?……プッ!!」
ヤマが肩を震わせている間、俺はビールを半分くらい飲み干した。
…面白くない…
けど、こうやって笑いに変えるのが、こいつの優しさだ。
「はぁー…笑った。
オグ。悩め?それが恋ってもんさ。んで、言葉を惜しむな?素直になるのが、後悔しない為の術だよ。
追っかけなら、俺のが先輩だかんな?…んで、俺にもっと面白いネタ提供しろ」
ヤマが俺の肩をバシッと叩いた。
「こっちはちっとも面白くねーよ。つかネタじゃないし」
「ま、ネタかどうかは置いといて。早く、さとー君に会わせろ」
「いやだ。お前に見せたら汚れる」
俺のその言葉に、ヤマはまた笑い出す。
何の解決もしていないけれど、何か気付かされた気がした。
言葉に関しては、ヤマの言う通りかも知れない…
それから終電までは、ヤマの愚痴を聞かされて、二人で酒を煽った。
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