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週末ドライブ …6
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雅治さんは俺の顔を伺うように見つめた後、ふいっと顔を前へ向け、遠くを見ながら話し始めた。
「俺さ…最近友達に、言われた事があって…」
「?」
友達の話?
「言葉が足りないんだとさ。…俺は」
「言葉?」
雅治さんは目線を下に動かした。
「俺は、他人の気持ちに無頓着と言うか…言わなくても通じるだろ、みたいな感じで今までやってきた事を、友達から指摘されてさ…駄目出しされたんだ。
今思えば、昔付き合ってた子らとダメになったのは…それが原因だと思う」
雅治さんは、何かを思い出したように、切なそうに口元だけで笑った。
それから俺の方を向いた。
「俺は…もうそういう失敗はしたくないんだ。…陸とは、ちゃんとお互いのことを理解して、向き合っていきたい。…だから、思ったことはちゃんと言葉で伝えようと思う。
だから……陸も、思ったことはちゃんと言葉で伝えて欲しい」
そう言って、膝の上でギュッと握りしめていた俺の手の上に、雅治さんが手を乗せた。
雅治さんの言ってることは、分かった。
でも、うまく、言葉が出なかった。
どう伝えていいか分からなかったから。
俺が黙ったままでいると、無理やり手を引かれて、指を絡めて手を繋がれた。
「陸さ、今朝から何か考えてる風だったろ?何か、俺に言いたいこととか、あるんじゃないか?」
雅治さんが、俺の目を覗き込むように首を傾げた。
雅治さんの真摯な態度に、胸が熱くなる。
「あ…の…」
「うん」
何か、言わなきゃ。
伝えなきゃ。
雅治さんはそれから、俺の言葉をじっと待ってくれた。
「すごく…くだらないことなんですけど…」
「いいよ。全然」
「僕自身も、戸惑ってるんですけど…その…色々あって」
「うん」
自分自身、心の整理をするように言葉を繰り出した。
「まず…雅治さんと、どうやって付き合って良いのか分からなくて。あの…同性と付き合うのとか初めてだから。…距離感とか…その…普段のやり取りとか」
「…ん。なるほど。…他には?」
「…雅治さんって…モテるのに、なんで…僕なのかな?って…」
今度は雅治さんは相槌すら打たなかった。
「こうやって、雅治さんが女の人から好意的に見られるのを見たら…なんか、胸が痛くて…。そしたら色々考えちゃって…」
俺が黙ると、雅治さんがまた「まだあるなら、言って?」と聞いてくれた。
その顔がとても優しかったから…
恥ずかしくて言えないと思ってた事も、つい口から出てきた。
「僕が…女なら、外で手を繋げるし…そしたら、みんなに恋人同士だって分かって…逆ナンもされないのに…って。
ごめんなさい。こんなくだらない事で悩んじゃって」
俺が、えへへと笑うと、雅治さんは手をギュッと握った。
「それで…『彼女がいい』って言った訳か。…他には?」
「…え、と…それだけ、です」
雅治さんは、目線を繋いだ手に移してから、再び俺を見た。
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