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松子、その後
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2月中は、S電機のプログラムを作るのに必死だった。
やった事のない内容なので、とにかく難しい。
3月頭から、2〜3週間ほどデバッグ作業をS電機で行って、そのまま、納品作業に移行する。
3月末の納品完了を目指すスケジュールだ。
あ、デバッグ作業っていうのは、プログラムを実際の機械で動かしてみて、プログラムの記述ミスを修正したり、正しく動作させるようにプログラムを変更したりする事だ。
プログラミングの中で、一番大変な作業と言っても過言ではない。
これがキチンと出来て、初めて納品作業に移行できる。
普段はうちの社内で、デバッグ作業まで済ます。
でも、今回のプログラムは特殊な物で、S電機のマシン環境がないと確認出来ないという事で、毎日S電機に通って作業することになった。
俺と佐々木さんは、別々のマシンでそれぞれのプログラムをデバッグする事になった。
俺の使うマシンと佐々木さんの使うマシンは、同じ作業ルームにあるけれども、ちょっと離れていてそれぞれ個々に作業している感じだった。
顔を合わすのは、出社時と昼休みと退社時だけ。
俺たちとS電機との窓口になってくれるのは、松井さんだった。
毎朝玄関まで迎えに来てくれて、たまに昼食も付き合ってくれる。
雅治さんから聞いたけど、どうやら二宮課長さんから日頃の態度について注意されたらしく…
俺に対しての、以前みたいな馴れ馴れしさは薄れていた。
こうやってみると、真面目な子なんだけどなぁ…
ちなみに、作業は河野さんに指示を仰ぎながらやっていて、俺と雅治さんは、ほとんど顔を合わせる事はなかった。
デバッグ作業開始して3日目の昼食後。
喫煙室に行く佐々木さんと別れて、作業ルームに戻ろうとした時、松井さんから声をかけられた。
「佐藤さん、一緒に休憩しませんか?」
えっ?
…ちょっと身構えちゃったけど、立場上お客さんの誘いは断れない…
「はい。行きましょう!」
そうして二人で、作業ルームに近い休憩所に行った。
数人、休憩している人がいたけど、皆、奥のテレビを見ている。
それぞれ飲み物を買って、テレビから離れた人のいないソファに腰掛けた。
「作業、どんな感じですか?」
そう、松井さんが聞いてきた。
「今のところ、予定通り進んでいます。…と言っても、河野さんにすごく助けてもらってるんですけどね。河野さん、プログラミングも詳しいみたいで、ビックリしました」
話しだしてから、しまった、と思った。
松井さんの前で河野さんの名前を出すのは、例の言い合いを思い出して、なんだか気まずい…
「そうですね。河野さんって、仕事が出来てすごいですよね〜!」
あれ?
意外な回答。
松井さんって、仕事の上では、ちゃんと河野さんのこと認めてるのかな?
「河野さんと言えば…先日はすみませんでした」
「えっ?…あ、いや…ハイ」
ええっ?
それ、話題にする⁈
ちょっと、対応に困るんだけど…
「以前、九州工場に行った時の…加藤さんの話、覚えてます?…河野さんが、小栗さんを狙ってるとか…」
えっ?そこから?
「あ、あぁ〜。…そう言えばそんな話、ありましたかね?」
「なんか…部署内じゃ有名な話なんですよ。大学の時から、ずっと片思いしてたらしいんです」
「へ、へぇ〜。そうなんですね」
てゆーか。
馴れ馴れしさが減ったとか思ってたけど…
人前限定だったんだ。
二人だと…前と変わらないや…はは。
「あの…なんでそんな話を、僕に?」
「うーん…だから、河野さんって、私にヤキモチ妬いてるんじゃないかと思ったんです。それがすごく気になっちゃって…」
は?
と、口から出そうになって必死で我慢した。
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