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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …13
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「あ、牧村くん。今日の売り上げについて、坂田さんが聞きたいことあるって言ってたわよ?ここは任せて、行ってきてくれない?あ、私はこの子のウィッグのこと、もうちょっと見たいし」
「えっ?あ…」
マキさんが、伺うように俺を見た。
あぁ…
遥香さん、俺と二人きりになりたいんだ。
マキさんに「大丈夫」と言う意味を込めてコクリと頷いて見せると、マキさんはシブシブと言った感じで部屋を出て行った。
「さてと」
ドアが閉まったと同時に、遥香さんがそう言った。
その一言にビクリと震える俺。
そんな俺に、遥香さんは優しく「ふふっ」と笑った。
「そんな、緊張しなくていいのよ?…陸くん?」
あぁ……
やっぱり、バレてた。
「あの、こんにちは…いえっ、こんばんは」
「いやだ!そんな顔しないで?って言われても、ビックリよね!まさかこんなところで会うなんて…何か、ごめんなさい?気付かないフリしようと思ったけど、それもどうかな?と思って…」
遥香さんに謝られるとは思わず、驚いて顔を上げた。
「あっ、いえ…その…」
遥香さんは、偏見とか蔑みとか、そんな顔じゃない…
店員さんの顏?なのか…よく読み取れない笑顔をしていた。
まあ、遥香さんの言う通り、お互い分かってるのにスルーなんてしたら…これからギクシャクするだろうし、お互いの立場からしてみれば、それは避けたい。
…うん。
「こっちこそ…スミマセン。こんなところで会うなんて…」
「あら、謝る必要なんてないのよ?…まぁ、確かにビックリしたけど。…牧村くんと知り合いだったの?」
そうだよね…ビックリしたよね…
無難な質問から始めてくれた遥香さんに感謝しつつ、言葉を選んだ。
「あの、実は、良く行くバーでマキ、むらさんと出会って…そこで…」
「あ、なるほど。モデルとしてスカウトされたんでしょ?牧村くん、強引なとこあるからなー。男をメイクの練習台にするとは…あいつ…。まあでも、陸くん本当に良い素材してるから、変身させると言う意味じゃ意欲を掻き立てられるかも」
うぐ…
変身って言われた。
遠回しだけど、やっぱり探られてるよね?
どうしよう…
どこまで話していいんだろ?
牧村さんが女装してることは話したら…ダメだよね?
でも、俺から喜んでメイクのモデルを受けたのではないと伝えたい…。
弟の恋人が、こう言うのに興味があるって思われるのは嫌だし。
イヤ、すでにそういう人間だと思われててもおかしくないけど…
ただ、マキさんの事を悪者みたいには言いたくない。
うわーん!どうすれば!
俺が言葉を繋げないでいると、遥香さんが「うーん」と少し悩んだ様子でこう言った。
「ここだけの話だけど…牧村くん、女装に興味があるのよね?だから、陸くんをそう言う意味で練習相手にしちゃったのかも。ホントごめんね?」
うっ!
遥香さんの心遣いが、逆に辛い。
ってゆーか、遥香さんは知ってたんだ。
マキさんの女装のこと…
あー、マキさんごめん!
俺は、俺と雅治さんとお姉さんの関係のために、保身を選びます!!
「あの、実は、知ってます…牧村さんの、女装のこと…」
「あら、もしかして、マキちゃんに会ったとか?じゃあ、会ったって言うのはあのバーかしら?」
遥香さんは、あのバーの名前を出した。
しかも、マキちゃんって言ったって事は、外で女装してるって知ってるって事?
「えっと、ハイ。そのバーで、マキさんに会いました」
「そっか!納得。なら話は早いわ。それで、無理やり誘われた?…ってゆーか、陸くんは元々こういうの…」
うっ、来た。
「いえっ!その、そうじゃなくて…えっと…」
「あ、いいの、いいの。ごめんね。無理に聞き出すつもりはないし。えーと、雅くんには、秘密なのかな?」
雅治さんの名前に、少し動揺した。
「そのっ…ハイ。すみません」
「ふふっ。だから、謝る必要ないって」
遥香さんは優しく笑ってくれたけど…
このままだと、気を使わせた上に、色々勘違いされるかもしれない。
雅治さんには秘密だけど、女装願望があるなんて思われたり…
ううっ。
そういうのは困る。
そう思った俺は、悶々とするより、いっそのこと正直に話した方が良いと考えた。
恥ずかしいけど、この状況を作ったのは自業自得なんだから。
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