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体温1<×洸>
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体調管理は社会人としての基本である。
そんなことは言われなくても分かっている。
しかし、いくら気を付けていても年に一度は体調を崩してしまうのが学生時代からの常なのだ。
朝はいつもと変わらなかった、はずだった。
体が熱っぽく、妙に頭がぼんやりとする。
洸がそのことに気付いたのは、定時をとっくに過ぎてからであった。
……これだけは終わらせとくか。
パソコンの画面に映し出されている作成途中の報告書に視線を向けると、気怠さと戦いながら洸は再びキーボードを叩き始める。
元々要領の良いタイプのため、文章を作るのにもそれほど時間が掛かる方ではない。
30分もしないうちに作成を終え、未だデスクにいる上長を横目に退勤の準備をしようとしていたが、鈴村、と低い声が耳に届いた瞬間に洸は微かに眉根を寄せた。
洸の上司である課長の小島は、気分の波が激しい。
以前、叱られる後輩を庇って2時間近く説教を食らったことは記憶に新しいが、彼の機嫌が悪い時はいつも普段よりも低い声を出すからすぐに分かる。
ーーそしてそれは今だ。
「…はい、何でしょう課長」
「帰ろうとしてるところ悪いが、この書類終わらせてからにしてくれるか」
納期が一週間も先の書類を、まるで急ぎのもののように洸の前に差し出す小島の顔は無表情のままだ。
この男は自分の仕事に手が回らなくなると、納期に関係なく部下に押し付ける。
今じゃなくて良いでしょう、と突っ込みたくなる言葉をぐっと飲み込んで、洸はその書類を引きつった笑みを浮かべながら受け取った。
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