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リンゴの優しい甘さが何だか妙に身に染みる。
黙ったまま咀嚼を続けていると、和人が今度は少し困ったように笑った。
「こんな大人しい鈴村、初めて見たからなんかちょっと新鮮だな」
「…人がいつも騒いでるみたいに言うなよ」
心外な言葉に軽く口を尖らせ、空になった皿をそのまま彼に押し付けてやる。
和人は素直にそれを受け取りながら、ごめんごめん、と悪いなどとは微塵も思っていなさそうな声で謝罪の言葉を紡ぎ出す。
普段であれば黙れと言わんばかりにその形の良い唇を塞いでいただろうが、残念ながらそこまでの体力は残っていない。
水と共に置かれていた市販薬を手に取り、それを一気に口内に流し込むと時計に視線を向けて小さく溜息を吐き出した。
「こんな時間まで付き合わせて悪かった。…もう平気だから、お前も早く寝ろよ」
帰宅が遅かったこともあり、夜中の3時を過ぎている。
自分が意識を失っている間も、和人は寝ることなく世話をしてくれていたのだろう。
一週間分の疲れも溜まっていたはずだ。
自らの意思で起こしたことではないとはいえ、洸が罪悪感に襲われていることに気付いたのか和人は柔らかな笑みを一度だけ見せると、いつもの様に布団の中に滑り込み彼の隣に寝転がった。
そして、なるべく移さないようにとの配慮で和人に背を向け、少しでも距離を空けるべく壁際に寄ろうとするその体を背中から包むようにして抱き締めた。
その瞬間、驚いたのか普段よりも随分と熱い洸の体が小さく跳ねる。
そんな可愛らしい反応に笑みを堪えることが出来ず、口元を緩めたままその熱い体を抱く腕に力を込めた。
「鈴村の風邪なら、いくらでも貰うから」
「っ、…」
洸の耳元で囁くように言葉を落とす。
途端、耳が弱い彼が息を詰めるのが分かった。
その押し殺したような吐息が、和人の中の欲望を容赦なく刺激する。
このまま、ろくに力の入らないであろう体を強引に開かせたら洸はどんな顔を見せるのだろう。
意識を失っている最中、苦しげに熱い息を吐き出し肩を上下させていた彼の姿は、普段以上に強烈な色気を放っていたことを思い出す。
下半身に熱が募り始めるのを、和人はもう止めることなど出来そうにもなかった。
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