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はじまりの日3
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深夜は2時に近付こうとしているが、金曜日の駅前は未だ明るかった。
日中は暑くなってきたものの夜の風は冷たく、肌寒さを感じさせるままだ。
洸は、駅前の路地を抜け、その地下にぽつんとある小さなバーへ彼を案内した。
会社から最寄りの駅前ではありながらも、この店の存在を知っている者は社内でも少なく、洸のお気に入りの店だった。
いらっしゃい。
重い扉を開けると、優しそうな顔立ちのマスターが柔らかな声で洸と、その後ろにいる田辺へと声を掛ける。
この店はこんな日でも客が少ない。先客はサラリーマンが二人だけだ。そんなところも洸の気に入っている部分だった。
いつも座るカウンターの定位置ではなく、テーブル席へと向かうとソファに腰を降ろして彼にも座るよう視線で促す。
こういった場所はあまり得意ではないのか、どこか遠慮がちに彼はソファへと腰を降ろした。
「マスター、俺はいつものと…」
そう言ってから彼へと視線を向けると、メニューを見ながらどれにすべきか未だ迷っている様子の田辺と目が合った。
やはり綺麗だ。なぜ俺は今までそれに気付かなかったんだ。
唇を楽しげに持ち上げて洸は彼の指先からメニューを奪う。
「お酒、そんなに飲まないの?」
「…あぁ、弱くてね。いつもビール一杯程度しか飲まない」
それを聞いてから益々楽しげに洸は笑みを深くした。
マスターには聞こえないように、声のトーンを落とす。
「甘いカクテルとかは苦手?」
「いや、そんなことないよ」
良かった、と洸は微笑んでみせる。
学生時代から散々遊んできた洸にとっては、この勝負はもう、彼をここに連れてきた時点から決まっていた。
「マスター。いつものと、ルシアン一つ」
マスターが柔らかく笑みを浮かべ、手際よくカクテルを作っていく。
その動作に見惚れるように視線を向けている彼の横顔を見ながら、洸は小さく笑った。
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