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お返し9
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聞き馴れたアラームの音で、洸はようやく目を覚ました。
昨夜、和人に脱がされたはずの衣服はきちんと身に着けており、散々中に出されたものの、後処理もしっかりとされているようだった。
重い体を無理矢理起こしながら洸は小さく呻く。
腰と喉がひどく痛んで、思わず眉根を寄せた。
「あいつ、無茶苦茶すぎだろ…」
それを言葉に出してから、思った以上に声が枯れていることに気付くと、洸は一人苦笑した。
情けねぇ。
和人はもう出社しているようで、部屋には人の気配はない。
体を引きずるようにしながらベッドから降りて居間に向かうと、珍しく朝食が作ってあった。
彼なりのお詫びのつもりなのかもしれない。
しかし、そんなものだけで到底彼のしたことを許す気にはなれなかった。
机に置かれたハムエッグの傍に「昨日は悪かった」とだけ書かれたメモを見つけると、その綺麗な字を一瞥してからくしゃりと丸めてゴミ箱へと投げ入れる。
ソファに腰を降ろし、冷めたハムエッグを口の中に放り込むと、どうにも怠い体に鞭を打ってパジャマ代わりに着ていた服を脱ぎカッターシャツを羽織る。
ネクタイを締めようとして、その手首が赤く色付いているのに気付けば、盛大な溜息を吐き出した。
あいつ、マジで覚えてろ。
スーツに着替え終えると、洗面所へと向かう。
身嗜みを整えようと鏡を見ると、酷い顔をしている自分と目が合った。
赤くなった目元と、腫れた目蓋は、今更もうどうしようもない。
何度目かになる溜息を吐き出して、倍返しにしてやる、と掠れた声で漏らしながら、洸は歯ブラシを口の中に突っ込んだ。
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