アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
本音3
-
ビールを少しずつ喉に流し込んでいきながら、時々隣の席の里美や、咲恵との会話を楽しむ。
開発部にも女性はいるが、大人しいタイプが多く、こういった華やかな女性たちとまともに話をするのは久しぶりだった。
みんな綺麗だし、こうやって話をしていると楽しい。
そんなことを思いながら、再び洸の方へと視線を送ると、咲恵と楽しげに話をしている横顔が視界に入る。
咲恵は洸や和人よりも入社が1年あとになるため、後輩にあたる。
しかし彼女は先輩である洸のことを気軽に呼び捨てにし、そして洸も彼女のことを咲恵、と呼んでいた。
洸の言葉に、咲恵が楽しそうに笑う。
やめてよー、と言うその声は高く、咲恵の白い手が洸の腕を軽く叩く。
その動作は流れるようでまるで嫌味がなく、お似合い、という言葉は2人のためにあるかのように思えるほどだった。
咲恵が洸に好意を抱いているのは、誰が見ても明らかだった。
もやもやと、する。
洸の笑顔は、毎日見ているそれとはまた違ったもののように感じる。
洸は男でも女でもいいと言っていた。
もしかしたら、咲恵とももう男女の関係があるのかもしれない。
そう思うと、居た堪れない気持ちになった。
ジョッキを掴む手に力が入り、一気にそれを流し込む。
そして空になったジョッキを置くと、和人はもう1杯ビールを頼んだ。
2杯目のビールを半分ほど飲み終えたころ、「なあ」と声を掛けられて和人は顔を上げる。
咲恵はトイレなのか席を外しているようで、洸がじっとこちらを見ていた。
「……なに?」
「なに?じゃねえっつの。お前、酒弱いんだから無理すんな。顔真っ赤だぞ、もうやめとけ」
洸が呆れたような心配なような、そんな表情でこちらを見てくるのに、妙な苛つきが止まらない。
今朝の、咲恵の細い体や笑顔を思い出すと胸が軋む。
洸はどんな表情で、どんな風に彼女を抱いたのだろう。どんな甘い言葉を囁いたのだろう。
(俺は、一体どっちに嫉妬しているんだ…?)
和人は洸から視線を逸らし、更に残りの半分も一気に飲み干した。
アルコールが全身を急速に駆け巡るのが自分でもよく分かる。
おい、と洸が言うのも無視して、椅子から立ち上がった。
ふらつきそうになる体をなんとか支えながらトイレへと向かう。
扉を開けて、鏡に映る自分の姿に思わず苦笑する。
真っ赤な顔。充血した瞳。
我ながらひどい顔をしていると思った。
「……情けないなぁ」
一人そう呟いて自嘲気味に笑うと、不意に扉が開く。
そこには、洸が立っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 56