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トモダチ2
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鈴村洸という男の名前は、入学当初から何度も耳にしていた。
かっこよくて、優しい。
そんな声の一方で、女にだらしがなくてチャラチャラしているという声もあった。
彼は色々な意味で有名人だったから、たまたま同じクラスになって、たまたま席が隣になったことは、始めはむしろアンラッキーだと思ったくらいだ。
彼の周りにはいつも人がいた。
もっと、俺様で偉そうなイメージを勝手に抱いていたが、実際の彼はとても人当たりが良くて気さくだった。
よく笑い、隣の席の健太にも自分から色々と話しかけてきてくれた。
隣で彼の顔を間近で見るようになって、ただ素直に、綺麗な顔だ、と思った。
決して女性的な顔立ちなわけでも中性的なわけでもなく、整ったパーツが完璧な位置に並べられていて、女子生徒たちが騒ぐのもよく分かる。
俺が女だったら多分惚れてるな。
そんなことを思いながら、健太は彼の横顔を眺めていた。
それから、健太と洸はすぐに意気投合した。
二人で、色々なことをして遊んだ。
洸が友達だと言って紹介してくれた年上のお姉様方ともよく遊んだし、海に行ったり山に行ったり、とにかく色々なところへ行って色々な経験をした。
健太の青春は、すべて洸と共にあったといっても過言ではない。
*
高校3年生の秋、健太は洸の住むマンションへと向かっていた。
洸はその当時から一人暮らしをしていて、よく彼の部屋に泊まりに行っていた。
その日もいつものようにふらっと彼の部屋に行ったら、丁度扉から1人の男が飛び出してきた。
その男は、健太と同じバスケ部の後輩で、1年生の篠田という男だった。
洸は部活には入っていなかったし、なぜ篠田が洸の部屋から出てくるのか甚だ疑問だったが、目元を真っ赤にしてその場を去っていった後輩のことを不思議に思いながら中へと入って、そして、気付いた。
「健太、来てたのか」
「……おー。…邪魔した…か?」
腰にバスタオルを巻き、濡れた髪のまま洸が笑う。
ベッドの上に散らかったままの下着は、そこで何が行われていたのかを物語っていて、鈍感な健太でもそれはすぐに分かった。
「篠田、泣いてたぞ」
「あー…」
気まずそうに洸が目を伏せる。
それ以上は問い詰めることはせずに、健太はコンビニで買ってきていたペットボトルのジュースを机に置いてソファへと腰掛けた。
洸が、両性愛者というのは本人から聞いていた。
健太は異性愛者ではあるが、そのことに偏見もなかった。
しかし、実際に情事の後を目にしてしまうと、なんとも言えない感情に襲われる。
どちらが女役なのだろうか、とか。
このベッドで、一体、2人はどんなことをしていたのか、だとか、そんなことがぐるぐると頭の中で渦巻く。
「健太?」
黙っている健太の顔を、不思議そうに洸が覗き込む。
親友を後輩に取られたような気になっていて、悔しいのかもしれない。
普段なら、きっと絶対に、こんなことを口にはしない。
そうは思いながらも、健太は唇を開いていた。
「…俺ともしよう、洸」
「は?」
洸が気の抜けたような声を出す。
それからすぐに呆れたように眉根を寄せて、健太の頭を軽く叩いた。
「馬鹿言うな」
「俺は本気だぞ、洸」
「…どうしたんだよ。変なもんでも食った?」
後頭部に走る僅かな痛みに思わず手を添えながら、健太はソファから立ち上がる。
自分よりも背の低い彼を見下ろすように立つと、洸が怪訝げに顔を上げた。
そしてもう片方の手で洸の腕を掴み、ベッドサイドへと引っ張る。
「篠田と出来るなら、俺とも出来るだろ」
「…いや、出来るけどさ。そうじゃなくて」
首を振りながら困ったように洸が眉を下げる。
突然の申し出に混乱しているようだった。
それもそのはずだ。
健太はノーマルだし、彼もそれを知っていた。
健太自身も、自分が何を言っているのか、もうよく分からなくなってきていた。
後輩に負けたくないという妙な対抗心が芽生えていたのも事実だった。
「そもそも、お前俺で勃つの?」
俺は多分勃つけど、と軽く笑いながら洸が尋ねる。
正直、そこには自信がなかった。
男に欲情したことなど未だかつてないし、当然男と行為に及んだことなどもない。
だから、実のところ、よく分からなかった。
「わかんね。勃つかもしんないじゃん」
そう言って、洸の腕を掴んだ手に力を入れる。
洸は盛大なため息を一つ漏らしてから、観念したように肩を竦めた。
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