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1日目
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俺は、人付き合いがあんまり得意じゃないんだと思う。
そんな俺が何を血迷ったか、大学三年生にもなって、ちょっとレトロなカフェでバイトなんかはじめちゃったんだけど。
初日の時点で、はやくも後悔してる。
「アメリカン、ミルクもシロップも大丈夫です。」
「えー...Sサイズでよろしいですか。」
「...あ、はい。」
「は、はい、畏まりました。」
こわ。痛んだ黒いロン毛でちょっとげっそりしたお兄さんが、席についた途端怠そうな低い声で注文してきた。
やだなー。まだ仕事に慣れてない時点で、いっちばん接客したくないタイプだよね。絡まれたりしませんように。なんて考えてしまってる俺は、やっぱり接客向いてない。
「...おい、アメリカン入ったぞ。」
「す、すすみません。」
「頼むよ、あの人常連なんだからね、ヘマしたら店長にシメられんよ。」
だったらできれば先輩に行ってもらいたいなー。
そんな大事なお客様を、バイト初日の俺に任せないで欲しいなー。
そんな事言えるはずもなく、コーヒーの乗ったトレーを、そろりそろりと運んだ。
「...あの、お待たせしましたっ。」
浅いカップに入ったアメリカンコーヒーをかたかた震わせながら、やっとの思いでその人のテーブルに置く。
なんかジロジロ見てくるんだけど。なに、やっぱり気に入らない?だよねー、自分で言うのもなんだけど、俺って頼りない。
「ありがとう。」
だからぼそっと怠そうにお礼言われたのには、正直かなり驚いて震えた。
え、こんなに人相わるいのに?俺街で見かけたら絶対避けて通るよ?そんな見た目なのにカフェの店員にお礼?
人は見かけによらないんだよね。接客したくないなんて失礼な事思ってすみません。
接客の醍醐味を初日にして味わって、調子にのってしまった俺は、次の日どんな災難が待ち受けているかなんて知る由もない。
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