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4日目
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「...今日は何?」
「アップルパイです!」
「...いいの?」
「いいんです!」
「...ありがとう。」
口元を隠すようにタバコをくわえながら、小さな声でありがとって言ってくれる。
少しだけニヤッとしたのを俺は見逃さなかった。こんな人相悪いのに甘いもの好きって、ちょっと笑える。
『今日は何』、だって。そんなに楽しみにしてくれてたのかと思ったら、ご馳走した甲斐があったというものだ。
ちなみに、これは俺のポケットマネーです。こんなに喜んでもらえるなら、これくらいの出費なんて惜しくない。ケーキだって、きっと美味しいって思われながら食べられた方がうれしいに決まってる。
それに、あのアメリカンさんが、嬉しそうにケーキ食べてる姿、みたいなー、なんて思ったり思わなかったり。
あ、アメリカンコーヒーを頼むからアメリカンさん。命名俺。
そういえば、アメリカンさんって甘いもの好きなくせに超細いんだけど、普段何食べて生きてんだろう。
ふと素朴な疑問が浮かんだ俺は、次の瞬間には質問が口から出てた。
「あの、普段何食べてるんですか?」
「え、なんで。」
「だって、甘いもの食べるのに、すごく細いですよね?普段何食べてんのかなぁって。」
「うーん...適当?1人暮しだし、外で適当に?」
ええ、わかんない。答えになってないじゃん。なんかあるでしょー、ほら、昨日食べた物とかさぁ。
「好きな食べ物とか、あります?」
「チンジャオロース。」
>>>>チンジャオロース<<<<
...チンジャオロース。即答だった...
やばい、なんなのチンジャオロースって。普通さ、好きな食べ物聞かれて、チンジャオロースって答える?出てこないよ、チンジャオロースって。どんだけ好きなの。
ふふっ...
やば。思わず漏れてしまった笑いを急いで引っ込めたけど、一息遅かった。アメリカンさんは急に黙り込んで、俺から目を逸らしてアップルパイに手をつけ出した。
取り繕うように少しにこっとして、そそくさとカウンターに戻る。あぶない、あぶない。
すっげー勢いでアップルパイ食べてるアメリカンさん。そんなに好きなのアップルパイ。なのに好物はチンジャオロース。
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