アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
苦しさの先
-
「クロー?御園がパーティーに誘ってくれたんだ!御園ん家に行こう!」
真昼が声をかけると、ベッドで動きながら黒猫は言う。
「先に…行っててくれ…、後で行く…。」
言葉を紡ぎながら動く影はどこか重々しい。
明らかにおかしいクロに向かって真昼は心配だと言わんばかりに声を発した。
「クロ?大丈夫か?具合、悪いなら俺断ってくるから…。」
「ちょっと、ふつ、かよいなだけだ…」
「お前酒なんか飲まないだろ…⁉︎」
冗談を言う黒猫の様子を伺いながら、もう一度真昼は聞いた。
「大丈夫か?」
「あぁ、でもちょっと…時間かかるから、先に…。」
「……分かった、先に御園ん家に行ってるからな?無理すんなよ?」
終始心配そうにしている真昼に、弱々しく手を振る黒猫は、またベッドに向かって落ちた。
手が少しずつ痙攣し始め、動悸も激しくなり始めた。
耳に微かに聞こえたドアの音、その音は真昼とクロを隔てる音だった。
パタ、ン……
「〜ッ‼︎‼︎ぐぁッ…ガァ……。」
昨日の様に心臓を握りつぶされるような痛みがクロを襲った。
発作の様に、波を作って少しずつクロを弱らせる痛みは、声すらも奪う。
ベッドの布団を蹴落とし、悶える。
またおさまったと思ったら始まる。
地獄のような繰り返し。
痛みが一瞬引いた隙に、フラフラと歩きながら部屋を出ようとし、また発作が起こる。
苦しい苦しい苦しい苦しい 苦しい
声が出ない分頭で再生される言葉、渇く喉を抑えながら、体を引きずりながら部屋を出ようとした時、苦しい中、視界がボヤける中で、目の前に転がっていたペットボトルに入った水。
また少し発作がおさまった隙に、ペットボトルを拾いあげ、口に水を含んだ。
「ゲホッ‼︎‼︎ゴホッ‼︎」
半分以上零しながらも、多少は体の自由がきくようになったクロは、壁伝いに歩き出す。
昨日はなかったペットボトル、真昼が俺を心配しておいて行ってくれたのだろう…。
痛み、苦しみの中に生まれた希望が、「感謝」だった。
早く家から出たい、出なければいけない。
と、重い重い足を引きずりながらクロは玄関の扉を開けた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 12