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夏の妖怪大運動会 9
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「...お前が欲しい」
「...ッ」
ゆっくりと話す銀司さんと、目が合わせられない
「....それは、俺が、純血の鬼だからですか」
「......」
そう問うと、銀司さんは黙り込む。
「...俺、入学前に叔父さんに聞いたんですよ。 純血の鬼の血って、いい香りがするんでしょ?寿命が何年も伸びるんでしょ?他の妖怪の礎となって、そうやって和の鬼たちは、滅んでいくんだよね。」
止まらない涙が頬を伝い、視界がぼやける。
「俺、鬼だって気づいたばかりだし、きっといつか他の強い妖怪に喰われて終わるんだって自分でもわかってるよ」
握られた腕が、グイッと引っ張られる。
トンッ...と胸に抱き寄せられ、身体が硬直する。
「言っただろう。この学園にいる間は、俺がお前を守るって。誰もお前を殺さない」
優しい嘘。わかってる。
「...本当は今すぐにでも俺を喰いたいくせに」
そう呟くと、銀司さんの肩が僅かに揺れる。
「...正直に言おう。俺は今、妖力が底を尽き掛けている。この間の毒が、嫌に厄介な物だったらしい。人間の作る毒は、恐ろしいな」
ゆっくりとそう告げる銀司さんの言葉に、胸が引き裂かれそうになる。
( 人間の作る毒 )
17年間人間として生きてきた俺には、なんとも言えない言葉だった。
ごめんなさい。
そう謝れば済む問題じゃない。
人間の毒が、銀司さんを蝕んでいるんだ
「...妖力の尽きた妖怪がどうなるか、知っているか?」
銀司さんの問いに、小さく横に首を振った。
「消えてしまうんだ。跡形も無く。元からそこには何も無かったように、白に戻るんだよ」
ゆっくりと紡がれるその心に、銀司さんの服を掴む手に、力が入る。
「...い、やだ」
そんなのいやだ
「...銀司さん、居なくならないで」
出会って1ヶ月も立っていないのに
毎日顔を合わせ、ご飯を作り
たまにキスをして、ふざけて笑ったり
どうしてこんなにも
この人を失うのが怖いんだろう。
男だから好きにならない。
ホモじゃないから無理。
そう思ってた片隅で
ずっと銀司さんの笑顔を思い出していたんだ
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