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動き出す闇 6
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-稜-
「若葉ぁあああああッッ!!!」
それは怒声にも似た、悲痛な叫び声だった。
白銀の光が、1本の矢のように、男に突き刺さる。
それは一瞬の出来事だった。
「ンガッ...ハッ.....」
男は若葉を手放し、痛みにのたうつ。
白銀の大きな狐が、若葉を優しく包む。
「しら、ぬ...先...ぱい...」
声にならない声で、その人の名を呼ぶ。
股別れした仙狐の尻尾が、微かに揺れる。
駆けつけたのは不知火先輩だけではなかったらしく、寮長をはじめとした第4学年壱組の生徒が変化を解き、苦しむ男を囲んでいる。
楠先生が、安堵のため息を漏らしたのが、微かに伝わる。
「くすの、き、先生....ッ」
泣きながら楠先生を仰ぐと、楠先生がギュッと強く抱きしめてくる。
「幸運にも、第4学年壱組の生徒が中庭で授業をしていたみたいね...。いち早く気づいてくれて、良かったわ。大丈夫、大丈夫よ。誰も死んじゃいないわ。ごめんなさい。先生何もできなくて、ごめんなさい」
涙声で何度も謝る楠先生を宥め、先輩方に視線を移す。
土蜘蛛一族の鞍馬朔先輩が男を取り押さえたらしく、暴れる男を力づくで押さえ込んでいる。
それを寮長が男の正面に立ち、思い切り何度も殴りつけている。
その顔でそれは本当に怖いです
なんて言ってる余裕もないほどに、辺りは緊迫していた。
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