アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
志願兵と 3
-
3人に別れを告げ、各自部屋で休むように伝える。
どうやら皆、水瀬先輩の指示で教室にいたらしい。
(恐らく十朱が話に来るだろうから、相手をしてやってくれ)
そう言う水瀬先輩の姿が、眼に浮かぶようだった。
3人が教室を出て行くのを見届け、一人教室で、そっとため息を吐いた。
静かに教室を後にすると、帰ったはずの颯と天袮の声が、階段上から聞こえてくる。
盗み聞きは良くないと思いながらも、その会話から耳を背けることがどうしても出来なかった。
(...あーちゃん)
(もうその呼び方はやめてって言ったのに)
(ごめん。でも絶対俺、あーちゃんだけは守るから)
(...こんな時にバカなこと言わないでよ)
(こんな時だからこそ、言うんだろ)
(...別に、守ってなんかくれなくていい)
(俺、あーちゃんと別れたこと、本気で後悔してるから。だからさ、もし今回生きて帰ってこれたら、俺ともう一度やり直してくれ)
(....ッ、そんな、こと)
涙声になっていく天袮の声に、2人が両思いだと言うことが伝わってくる。
この2人、前は付き合ってたんだな。
その事実が分かった今、余計に巻き込んでしまった事への罪悪感に、心が重くなる。
(...じゃあ、またな。あーちゃん)
(...またね、颯)
別れの言葉と共に、2人が歩き出すのが分かった。
やばい、と思ったけど、隠れる時間もなくて、天袮と鉢合わせてしまう。
「わ、十朱先輩...!」
そう驚いた天袮の瞳が微かに赤く潤んでいて、必死に涙を堪えていたのが伝わってくる。
「ごめん、盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど」
「いいんです!逆にごめんなさい、変なこと聞かせてしまって」
「いや、天袮達は悪くないよ」
「......、」
急に黙ってしまう天袮の頭を、ポンポンと撫でてやる。
「....ッ、ごめ、なさ...」
「いいから、思いっきり泣いとけ」
「....う、....ッ、颯...、の、ばか...ッ」
声を押し殺して泣く天袮を、静かに宥める。
ゆっくり流れるその空間に、そっと瞼を閉じた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
102 / 117