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志願兵と 8
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「十朱、くん」
「...はい」
知らない人が、薄緑色の大きな目を向けてくる。
「僕は柊紫乃。こっち、双子の弟の柊紫弦」
綺麗な前下がりにカットされた髪の毛を揺らしながら、紫乃先輩が隣にいた人を指差す。
紫乃先輩によく似た人。
目の色だけが、少しだけ違っていた。
薄青色の瞳が、俺を捉える。
ぺこりと頭を下げると、2人もゆっくり頭を下げる。
「....銀ちゃんを、助けてくれてありがとう」
「ぶふぅッ」
いや、笑ってないよ。
こんな真剣な空気の中笑えるほど馬鹿じゃないよ。
「おい、若葉」
「はい。笑ってません」
「......」
いや、だってさ。銀ちゃんは不意打ちすぎるだろ。
そんな呼び方されてたの?
可愛すぎるだろ
「銀司さ...銀ちゃんを助けたって、どういう...、ふっ、ことですか?」
笑いを堪えながらそう聞くと、銀司さんが盛大に溜息をつく。
右京さんも軽く口角が上がっているのがわかる。
後が怖いので銀ちゃん呼びはもうやめます。
「十朱くんは、銀ちゃんが、人間の毒にやられたのは...知ってるよね」
「...あ、」
薄青色の瞳。紫弦先輩が、真っ直ぐに俺の目を見てくる。
銀司さんと出会った時の事が、一気に脳内を駆け巡る。
弱り切っていた銀司さんに水を飲ませて、そこで初めてちゅーを...じゃなくて、初めて銀司さんと話したんだ。
「あの時、銀ちゃんは僕らを助けるために、わざと人間の毒の餌食になったんだ。僕らじゃ人間に勝てなかった。銀ちゃんがいなかったら、僕たちは今此処にはいない」
ゆっくりと銀司さんの顔を見ると、銀司さんはいつも通り、ちょっと偉そうに笑っている。
「でも、力のある銀ちゃんでも、あの毒を一人で消すことは出来なかった。あの時十朱くんがいなかったら、銀ちゃんもどうなっていたかわからないよ」
ギュッと掴まれたように、心臓が痛む。
「だから、ありがとう。銀ちゃんを助けてくれて、ありがとう」
にっこりと微笑む紫乃先輩と紫弦先輩に、もう一度頭を下げる。
俺、何もしてないよ。
でもあの時銀司さんに会えて、本当に良かったと思ってる。
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