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志願兵と 10
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「ごめんね、若葉くん。掴めない奴だけど、馬鹿なだけだから許してやって」
そう言って横に立ってた人が、やれやれと言う風に、白藍に染まるポニーテールをくるんと揺らす。
青竹色のとろんと垂れた瞳に浮かぶ泣きぼくろが、酷く可愛らしく感じる。
「僕は一堂千草。鵺っていう妖怪だよ。知ってるかもしれないけど、さっきのは雲居鉄心。鉄鼠だよ」
身長は俺より少し高いくらいなのに、綺麗と可愛いを兼ね揃えている。
なんなんだ、このクラスは....。
銀司さんと言い、一堂先輩と言い、もうみんなルックス良すぎて笑うしかないよ。
頭を下げて挨拶をすると、いい子だね。と、雲居先輩がコロコロ笑う。
「若葉くんからしたら、僕たちが有志で参加する理由なんて無いように見えるかもしれないけど、僕たちは、銀司の大切な恋人を他人だと思える程の非情さは持っていないんだ」
クスクスと笑う一堂先輩から目を離し、銀司さんをもう一度見上げる。
この人達が、銀司さんと4年間を共に過ごしてきた、銀司さんの仲間なんだね。
その銀司さんの仲間に入れてもらえたような気分になって、どうしようもなく嬉しくなる。
目が熱くなるのを隠そうと、照れ笑いをする。
ゆっくりと伸びてきた銀司さんの腕に強く抱きしめられ、分厚い胸板に顔を寄せる。
「泣いとけ」
そう言って笑う銀司さんに、少し腹がたつけど、仕方がない。
「嬉し泣きですから」
そう言うと、後ろから優しい笑い声が聞こえる。
「俺たちの鬼はめんこいのう。めんこい鬼さんは、守りたくなるのが男だでなぁ」
少し赤くなった目で振り向くと、
色黒の肌に似合う菖蒲色に跳ねる短い髪の毛を、右京さんが嬉しそうに揺らしていた。
そんな右京さんに、鞍馬先輩が頬を緩ませる。
この色黒カップルに、何故だか凄く癒される。
俺、恵まれてるなぁって、改めて感じたよ。
この人達を傷つけない為に、強くなりたい。
きっとこの人達の方が強いから、銀司さん辺りには鼻で笑われそうだけどね。
ぎゅっと銀司さんの手を握って、みんなでもう一度笑った。
優しすぎて、暖かいこの場所が、どうしようもなく愛しくなった。
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