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届かない右手 1
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ジリジリと太陽が照り付ける中、叔父さんの大きな姿に、口を紡ぐ。
鬼の姿になった叔父さんは本当に強そうで、まさに開いた口が塞がらない。
「驚き過ぎだぞ、若葉。叔父さんって言ったって、俺はまだ162歳だ。妖怪の中じゃあまだまだ新米だからな」
ふはは、と笑う叔父さんに、いやもう次元が違うよ。なんて突っ込んでみる。
いつか俺もあんなに大きくなるんだろうか。
「ふぅ...。まずは、鬼としての戦い方を、覚えなきゃな。俺たちは、鬼だ。他のどんな妖怪にも負けない、力を持つ」
そう言いながら叔父さんは。地面に指を立てる。
「こんな地面くらい、どうにだって出来る」
バキィ、と音を立てながら、叔父さんの指が地面を大きく抉る。
「...まじ、か」
「素早さと力強さ、そして大きな妖力を兼ね揃えた純血の鬼は、他のどんな妖怪にだって負けない強さを持つ」
そう言ってニヤリと笑う叔父さんに、少しだけ恐怖を覚える。
「だがな、集中力が続かないのが、最大の欠点だ。小さなミスが大きなミスを招き、最悪の事態を巻き起こすことだってある。だからな、出来るだけ一瞬で終わらせるんだ。長期戦に持ち込まれたら、俺たちに勝ち目はないと思え」
「...はい」
「そういえば若葉、お前、妖術はどれくらい出来るんだ?」
「妖術は苦手じゃないけど、体術のサポートに使えないか考えてる所なんだ。稜にアドバイスを貰って.......こんな感じ」
右手に土の元素を集め、 粒子を薄っすらと張り巡らせる。
土でコーティングされた右手を、叔父さんに見せると、叔父さんは、ほぅ。と頷いた
「いい考えだな。元々瞬発力に優れた和の鬼は、接近戦に強い。その強さを更に倍増出来るだろう」
叔父さんがそう言って、優しく微笑む。
「ここの生徒は皆強い。だがな、実戦を経験したことのないものが多すぎる。本当の殺し合いを、皆知らないんだ」
叔父さんの声が、酷く冷えていく。
「俺は、それが怖くて堪らない。いくら特訓や訓練を重ねたって、実戦にはならない。相手の力量を測れない今、生徒たちには危険が大きすぎる」
「....叔父さん、それでも今は、強くならなきゃいけないんだ」
「あぁ、わかっているさ」
そう呟いた叔父さんの声があまりにも悲しげで、俺は黙って俯いた。
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