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届かない右手 3
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そして訓練を始めてから、1週間と4日が経った今日、学園中に警報が鳴り響いた。
この警報は、西洋の鬼の襲撃をいち早く知らせるものとして、水瀬先輩が提案したものだった。
空を仰げば、第2グラウンドから狼煙が上がっている。
古風だけれど、わかりやすい目印で。
そんな事考えてる暇なんか無いはずなのに、思考回路がフラフラと散歩をしてる。
喉の奥が、グッと熱くなる。
うまく息が吸えなくて、足が震えそうになる。
お昼休憩でグラウンドを離れて30分後の出来事だった。
本当に俺、タイミング悪すぎ。
「...ッ、若葉くん!!!!」
後ろから声を掛けられて振り向くと、其処には穂高椛先輩の姿。
「ほ、穂高先輩...!」
「大丈夫、理事長もみんな第2グラウンドに向かってる!!!あ!!なんで僕、この姿のまま走ってるんだろう!!本当に馬鹿だ!!」
そう言った瞬間、穂高先輩は小さな着物をきた男の子の姿になり、ふわり、ふわりと飛ぶように移動する。
「若葉くん!!僕、先にってるから!」
先輩の声を聞きながら目を瞑り、鬼の姿になる。
本当だ、俺も馬鹿だ。
こっちの方が何倍も早く動けるのに。
小さく舌打ちをしながら、ぴょんぴょんと飛ぶように大股で走る。
どうか間に合ってくれ。
みんな無事でいてくれ。
そう思って目を開けた瞬間に、爆音が鳴り響く。
高らかに聞こえる嫌な笑い声。
ああ、もう始まっているんだ。
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