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18歳以上ですか?
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友則君とこういう関係になったのは、大学1年の秋からだ。
その頃にはもう、彼は遊び始めてて。いかがわしいお店にも出入りしてるとか、そういう噂を、高校時代の共通の友達から聞いた。
友則君とは大学が別だったから、それ聞いてビックリした。
それに、ショックだった。オレ……誰にも言ったことなかったけど、ずっと彼のコトが好きだったからだ。
ただそれは、オレの勝手な都合でしかなかった。
18歳とはいえ、友則君はもう高校生じゃない。お酒や煙草はダメだけど、風俗店に行くのは法律的に許される。だから、彼がたくさんの女の子と遊んでようと、いかがわしいお店に入ろうと、本人の自由だ。オレがとやかく言うことじゃなかった。
けど……頭では分かってても気持ちがついていけなくて、会った時、つい言っちゃったんだ。「あんま遊びとか、よくないよ」って。
友則君はすごく怒った。「はあ!?」って顔をしかめて。
「てめーに関係ねーだろ? オレが誰かと遊んで、てめーに何か迷惑かけたか?」
そう言ってオレに詰め寄り、胸蔵をぐいっと掴み上げた。
そこで引き下がれば良かったんだろうけど、つい「でも……」って口答えしたから、余計に怒らせたみたい。
キリッとした濃い眉を吊り上げ、じろっとオレを睨みつけた友則君は――しばらくの沈黙の後、ふんと鼻で笑った。そんで……言ったんだ、オレに。
「そんなこと言ってさ、お前、ホントは自分が遊んで貰いてーんだろ? オレのコト、好きだもんなぁ?」
って。
「お前の気持ち、知ってたぜ」
って。
図星だったから、グサッと来た。
「来いよ、遊んでやる」
そのまま彼に手を引かれ、ホテルに行って……抱かれて。そうして、今の関係が始まった。
友則君が手を引く力は、弱かった。
きっとオレが逃げられるように、手加減しようとしてくれたんだと思う。ホントは優しい人だし。ホテルに入ってからも、「逃げんなら今だぞ」って何度も言われた。
逃げなかったのはオレだ。拒絶しなかったのも。「イヤだ」って言ったり、抵抗したりもしなかった。
だってオレは、高校時代からずっと彼のことが好きで。例え大勢の中の1人にしか、なれないとしても――その中に入れないよりは、はるかにマシだと思ってた。
それ以来、彼の「遊び相手」の1人になって、もう1年だ。
友則君は、相変わらず気の向くままに遊んでるらしいけど、それでいて、大したトラブルにはなってないみたい。
この辺はやっぱ、頭イイからなのかな? 要領がいい? 割り切って遊べそうな子ばっか選んでるんだろうか?
オレが知らないだけで、もしかしたらオレの周りにも、彼と遊んだことのある子、いっぱいいるのかも。
具体的なことは何も聞いてないし、聞きたくないし、想像するだけで吐き気する。だからオレはいつも、友則君の電話や話の内容を、知らんぷりして聞き流す。
それでも大講義室や大学の学食で、大勢の女の子を目にするたび、どうしても聞き耳を立ててしまうんだ。
誰かが友則君の噂してないかな、とか。
友則君とまさに今、電話してる子はいないのかな、とか。
友則君の行く乱交パーティに、行くって言ってる子、いないかなとか――。
自分でもバカバカしいとは思うけど、でもどうしても、ドライに割り切ることは、できそうになかった。
ぼうっと周りの音を聴いてたから、いきなり側で名前を呼ばれて、飛び上がるくらい驚いた。
「達川君」
「うえっ!?」
ガタッと立ち上がったオレに、声を掛けて来た子もビックリしてた。
「あ、えっと、ごめんね?」
引き気味に謝られて、オレの方が恐縮だ。
「いやごめん、考え事してて……」
口から出まかせに言い訳しながら、ちらちらと顔を見る。
見覚えのあるような無いような子だ。何かの授業で一緒だったかな? よく思い出せなくて首をかしげてると、その子はもじもじとためらった後、口を開いた。
「お願いがあるんだけど」
それを聞いた瞬間、ドキッとして、どよんと一気にテンションが下がる。言われるまでもなく、「お願い」の内容は予想がついた。
「達川君、TR大の友則君と仲、いいよね?」
そんでその後、こう続くんだ。
「紹介して貰えないかな?」
実はこういうこと、初めてじゃない。
一緒にいるとこを見たとか。同じ高校出身でしょ、とか。オレを繋ぎに使おうとする子たちは、オレも友則君の相手の1人だとは、きっと思ってもないんだろう。
そして、そうやってぐいぐいと行動を起こすような子を、友則君が一番嫌うんだっていうことも……きっと知らないんだろうと思う。
紹介したってムダだ。以前はどうだったか知らないけど、友則君は今、そういう子を絶対相手にしない。
「付きまとわれんの、メーワクなんだよ」
整った顔をしかめて、イヤそうに言うのが目に浮かぶ。
でも、ムダだって分かってても、イヤなものはイヤだった。
自分の好きな人に、他の女の子、紹介なんかしたくない。友則君はオレの恋人じゃないけど、オレには友則君だけだから。
「彼はやめた方がいいよ。お勧めできない」
そう、勧めない。だからやめて。彼に近付かないで。触らないで。お願い、友則君の「遊び相手」にならないで――。
オレは心の叫びをぐっと抑えながら、目の前の女子に首を振るしかできなかった。
自分でも今、きっとイジワルな顔、してるんだろうなと思う。
鏡なんかとても見れない。醜い自分がすごくイヤだ。でもそれ以上に、友則君を盗られるのが、もっとイヤなんだ、ごめんなさい。
不服そうに去ってく女の子を見送って、はぁーっとため息をつき、イスに座る。
友則君からの着信があったのは、その直後。午後の2コマ目が始まる直前だった。
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