アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
あすなろ抱き
-
握る薄い柔らかなシャツの下には、固くてでも柔らかで温かい西二郎さんの背中があると思うと、なんだか切なくなる。
「ごめんね」
その硬質に名残惜しむように、でもしっかりと手を離す。
バイバイ、西二郎さん
僕は最後にもう一度、西二郎さんの匂いを感じると、背を向けた。
「どれほど、どれほど俺を振り回したら咲耶君は満足するのかな?」
驚くほどの速さで僕を引き止めたのは西二郎さんだけど、急な展開に、僕の頭の中はパンク寸前だった。
…か、顔が近い!!
いわゆるあすなろ抱きで引き止められた僕の体は大きく傾き、大きな西二郎さんの胸の中に収まっている。
耳に西二郎さんの癖毛が当たってこそばゆい。
そして何より、西二郎さんのかっこいい声が耳にダイレクトに届いて、辛い。
驚きと緊張に固まる僕を、西二郎さんの長い腕は骨が軋む程強く抱きしめる。
「なんで、俺の返事も聞かずにどっかに行こうとするの」
少し拗ねたような西二郎さんの声に、吐息に、距離に、目眩がする。
死んじゃう
好きな人に抱きしめられるって、こんなに辛いの?
痛いのは僕の軋む体なのか、心なのか、心臓なのか分からなくなって、思わず体が逃げる。
そんな僕の様子を見てか、更に強くなる拘束。
「…だめ!離して!無理!」
思わずそう言って振り払った腕に、一瞬で後悔する。
振り返った西二郎さんの表情が、雰囲気が、あまりに悲しそうだったから。
「…なんで」
まるで駄々っ子のように泣きそうな西二郎さんに聞かれ、思わずカッと頬が熱くなる。
「だって!ドキドキして、しんどいから!!」
言い終わるかいなや、押し付けられた柔らかな彼の唇に、もっと辛い。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 17