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後日談 内山side ①
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『また 連絡してくれる?』
『うーん、どうかな。』
腕の中の女の子の名前は知らない。
ゆみちゃんだっけ?ゆきちゃんだっけ?
今日の合コンでお持ち帰りしただけだし。1番可愛かったんだよな。顔が。
『内山君の携帯 教えてくれないの?』
『俺から連絡するよ。番号、これに書いといて。』
俺は サイドボードの上に置いてあるホテルの名前の入ったメモ用紙を1枚千切って その子に渡した。
面倒臭せえ。
『絶対 連絡してね。』
『うん、するする。』
しねえよ?初めて会った男とその日にラブホに行く様な女に 本気になる訳ねえだろ。
俺は女の子からメモ用紙を取り上げると、覆い被さり 3回戦目に突入した。
ハッキリ言って俺はモテた。
顔はいいし、背も高い。おまけに家柄までいいとくりゃ 周りの女達が俺を放っておいてくれない。
さっき女の子に貰ったメモは ホテルを出る時、丸めて棄てた。もう会う事も無いだろ。
俺の大学生活は 兎に角乱れまくってた。
当時 俺は完全に人生をナメきっていた。俺にとって大学の4年間は 自由を満喫する為だけに存在したと言っても過言じゃない。就職は 親父の会社に決まってたし、卒業さえすりゃよかったから。今思い返してみても あの4年間は無茶苦茶だった。若気の至りでは済まされない犯罪ギリギリの事もした。よく捕まらなかったもんだ。
性格に やや難があるのは自覚済みだ。
ガキの時から 家柄でグループ分けする様な、友達とも呼びたくねえクラスメートに囲まれて来たから 性格がひん曲がったのは仕方無いと思う。
中等部に上がってすぐ初体験も済ませた。相手は2年の先輩だった。親父の部下の娘だったか?取引先の娘だったか?覚えてない。何か 俺の名前を知ってて 、時々図書室の奥の資料庫に連れて行かれた。 何度目かの密会の時 最後までヤラせてくれた。初体験はバックだった。
中1で童貞を棄ててから そっちの遊びも覚えた。高等部に上がってからは たまに男も抱いた。興味本意だったけど 意外にも気持ち良かった。勿論、恋愛感情なんか微塵も無い。ただの性欲処理として。
俺は何をしても そつなくこなせた。勉強も運動も。
それもいけなかったのかも知れない。俺は何かを一生懸命した経験が無かった。
大学を卒業して親父の会社に就職する時、親父から 卒業と就職祝いにマンションを貰った。俺が言うのも何だけど、親父は完全に子育てを間違えてる。俺が要領がいいってのもあるんだろうけど 俺は親父に怒られた事も、勿論 殴られた事も無かった。
俺には上に年が離れた姉貴が2人居る。親父にしてみりゃ 年を取ってようやく出来た男の子だったから まあ 可愛かったのかも知れない。
親父は子育ては完全に失格だけど 仕事に関しては凄えやり手だ。一代で今の会社を築いた。大手のメーカーと競う為に 抜け穴を巧妙につくやり方で会社を大きくし 今では この業界でも大手と堂々肩を並べている。
入社するにあたって 俺は親父、つまり社長の息子だという事は社員全員に伏せられた。贔屓される事無く 営業で一から勉強して来い という事らしい。
面倒臭せえ。適当でいいだろう。どうせ跡取りになるんだし 最初から経営の勉強した方が良くね?
親父が何で俺を営業に放り込んだのか 意図も考えず、俺は学生気分のまま入社した。
新人研修の時、アイツと同じ班になった。『鮎川 真琴』俺とはタイプが違うが 中々のイケメンだ。背も俺よりは低いが 平均よりは高い。どうせコイツも人生を謳歌して来たクチだろ。同類とは仲良くしとくか。鮎川に対する第一印象はそんな感じだった。
ダルい研修期間が終わり、改めて配属された部署に 鮎川も居た。研修中にも思ったけど コイツはどうもお人好しだ。自分の事より他人の心配ばかりしてる様に見えた。いや、自分の事は厳し過ぎる位キッチリやってる。ただ 他人の世話を焼きたがるというか、周りの人間に対して気配りが出来るというか、兎に角 今まで俺の周りには居ないタイプの人種だった。
それでも ひねくれてた俺は、どうせ計算だろ?俺の目は誤魔化されねえよって鮎川の事を斜めから 見てたと思う。
時間が経つにつれ分かった事がある。鮎川は他人を押し退けて先頭に立つ、というより 陰で皆を助ける、いわば縁の下の力持ち的な感じだった。だからこそ結果で頭角を現す事は無かったけど その分仕事は人一倍してた。損な役回りなのに嫌な顔ひとつしない。一緒に仕事をしていく内、最初鮎川に対して抱いていた感情は消え、どんどん鮎川の魅力に惹かれていくのが分かった。
鮎川の周りには自然と人が集まっていった。俺も昔から人に囲まれてはいたが、俺と鮎川は根本的に違う。俺の周りには 俺を利用しようとする連中ばかりだったけど 鮎川に寄っていく人間は鮎川を慕って集まっている。
俺も鮎川の目に映りたい。鮎川に認められたい。
いつしか そう思う様になった俺は 人生で初めて本気を出した。やがてそれは結果として成果を表し始めた。
気が付いたら 鮎川だけじゃなく周りからも一目置かれる存在になってた。
俺の必死の努力の甲斐あって 鮎川と俺は社内でも特に親密になれた。あくまで仕事上でだけど。でも俺はそれに大いに満足していた。
仕事で結果を出す度、鮎川はまるで自分の事の様に喜んでくれる。鮎川のそんな顔を見たくて 俺も仕事に励む。それでまた結果を出す。
鮎川と居る事によって生まれる相乗効果は絶大だった。
会社では仲良くしていたけど、プライベートでははとんど絡みが無かった。鮎川はいつも仕事が終わったら真っ直ぐ家に帰ってしまう。周りの奴らに呑みに誘われる事も多かったのに 鮎川が誘いに乗った所を見た事が無かった。
俺も鮎川を誘いたかったけど、他の奴らみたいに断られるのは嫌で プライドが邪魔して誘えずにいた。
去年の年末、鮎川と仲良くなって初めての納会の日。会社の呑みではあるが 初めて鮎川と酒の席で一緒になれた。俺は浮かれていた。鮎川も珍しくテンションが高かった。まあ、年末凄え忙しかったからな、鮎川は人の3倍は仕事してたんじゃねえか?そりゃ呑みたいよな。
当然の様に鮎川の隣を陣取った俺は 浮かれ気分のまま鮎川と酒を交わした。
でもその日、俺は一気に奈落の底に突き落とされる事になる。
普段プライベートを一切話さない鮎川が ほろ酔いで気分が良くなってたのか ポロッと 自分には高校の時から付き合っている恋人が居る。大学に入ってからずっと同棲している。と告白した。
恥ずかしそうに照れて話す鮎川は 少し微笑んでいて、幸せそうで、とても綺麗だった。
ショックだった。俺はその時初めて自分が鮎川に抱いている気持ちに気付いた。と同時に今まで受けた事も無い程の衝撃を喰らった。
ははっ、好きだと気付いた日に失恋か?
まさか俺が男を好きになってたなんて。今まで男を恋愛対象として見た事なんて1度も無かったし、男だろうが女だろうが 振られた事も1度も無かった。俺はその日 初めて自分で歩けなくなる位 酒を煽った。
気が付くと鮎川が俺の肩を担いで タクシーに乗り込む所だった。あの後、鮎川と何を話したのかも覚えて無い。隣に座った鮎川が俺に家の住所を聞いてきた。送ってくれるのか?さっき失恋したばかりなのに 俺の胸は高鳴った。タクシーの中で鮎川はずっと俺の背中を心配そうに さすってくれた。
嬉しい。でも辛い。
俺は ただ鮎川の肩に寄り掛かってタクシーに揺られてた。
マンションに着くと 鮎川はタクシーを待たせたまま俺を部屋の前まで送ってくれた。
鮎川も少し酔っていたし 中で少し休んで行ってくれと言ったんだけど 鮎川はそれをやんわり断って帰って行った。
鮎川は正しい。もし部屋に入って来てたら 俺は手を出さずに我慢出来たか分からない。
それ位 自分でも気付かない内に 俺は鮎川に惹かれていた。
恋人に対してとても誠実で、
ただの同僚の俺に対しても親切で、
そんな鮎川を振られてもやっぱり好きだと思った。
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