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後日談 内山side ④
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風呂から上がった鮎川は 手際よく料理を作ってくれた。キッチンで せわしなく動き回る。そんな鮎川を邪魔しない様に そっと見つめる。
包丁のトントンていう音、フライパンのジュッていう音、全てが耳に心地いい。
好きなヤツが 俺の為に料理を作っている。
俺は 今まで感じた事もない程の高揚感に包まれていた。
出来上がった料理は どれも旨くて。
俺は自分のよこしまな気持ちを直視する事を避け 余計な事は全て忘れて鮎川との食事を楽しんだ。
食事が終わる頃、鮎川はポツリポツリ 事の経緯を話し出した。
半年前から 恋人の様子が変だった事。
残業が増え、朝帰りが増えた事、度々週末に出張に出掛ける事…。
今朝、出ていく と言われた事…。
さっきまでの明るい表情は消え、とても辛そうに でも気丈に俺に話してくれた。
許せない!!何で?!
話を聞いた所、鮎川には全く非が無いじゃないか!
それどころか、この半年間 どれだけ頑張ってきた事か!鮎川の何処が気に入らない?!俺には相手がアホにしか思えなかった。
『で、これから どうすんだ?恋人が出て行った後、そのまま あのマンションに住むのか?』
もしも恋人と別れたら、当然 あのマンションからは出ていくんだろう?
『いいや、それは無いよ。1人じゃ広すぎるし 家賃だって払えないよ。引っ越さなきゃね。今度は会社の近くで探してみるよ。』
俺は、声が震えそうになるのを必死に押さえ、 さりげなさを装って言った。
『なあ、』
『ん?何?』
『その……お前さえ良ければ、ここで一緒に暮らさないか?部屋だって見ての通り余ってるし、お前も次 部屋探す手間も省けるだろ?会社も近いし 生活に必要な物は揃ってる。何なら 明日からでも 体一つで来てくれたって構わないよ。』
『内山?』
『いやあ、その アレだ。うん、もし肩身が狭いなら家賃入れてくれたっていいし、それならルームシェアだろ?俺も旨い飯が食えるし 一石二鳥いや、三鳥だと思わないか?』
俺、声 震えてないか?
いきなり ただの同僚から同居しないかと言われて 鮎川は怪しんでないか?でも もう鮎川を放っておけない。俺が隣で守ってやりたい。
背中を汗が伝う。鮎川、頼む!断らないでくれ!
…でも 間髪入れず 鮎川は言った。
『内山、ありがとう。でも それは出来ないよ。確かに、内山の言う通り ここにお世話になったら 物理的な問題は全て解決するよね。正直 物凄く助かるよ。でも俺 今ここで踏ん張らなきゃ駄目なんだ。』
『まだ好きなんだ。』
『鮎川……。』
…ああ、俺は何を勘違いしてた?
何を浮かれていた?
恋人と別れた穴を俺が埋めてやれるとでも思ってたのか?それを鮎川が望んでいるとでも?
恋人に浮気され、避けられ、別れ話をされたというのに 鮎川の恋人を想う気持ちは 少しもぶれない。
偶然とはいえ、自分の誕生日に鮎川がここに居るという奇跡が 俺の気を大きくさせていた。
この奇跡はまだ続くと…。
『内山、俺 内山にまだ言って無い事があるんだ。』
鮎川は何か決意した様な目で 俺を真っ直ぐ見据えて言った。
まだ言って無い事…それなら俺にもあるよ、鮎川。
お前に軽蔑されるのが恐くて、言いたくても言えない 一言が。
俺は 鮎川に黙って頷いた。
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