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真琴がコーヒーの用意をしてくれている間に 風呂場へ行き、お湯を張る。ゆっくり浸かれる様に少しぬるめの温度に設定。
次に洗面所に俺と真琴の着替え一式とフワフワのバスタオルを置く。洗いたての洗濯物からは ほんのり柔軟剤のいい匂いがする。俺が洗濯したやつだ。
食事の後片付け同様、洗濯と風呂掃除も俺の分担になった。
あれから俺達は風呂も一緒に入っている。
このマンションに越してきた当初は割とよく一緒に入ってたんだけど、俺がカラスの行水の為 真琴と湯船に浸かってゆっくり話すなんて事なかった。
そして そのうちなんとなく別々に入るのが普通になっていった。
思い返してみても、俺はつくづく我を通していたんだと気付かされる。
与えられる優しさに慣れきっていたと思う。
浴槽に湯を張る位はしてたけど風呂掃除なんて片手で数えれる位しか した覚えがねえ。真琴は俺の後に風呂に入って 自分が出る時に いつも軽く掃除してたらしい。そう言えばタイルにも、シャンプーやリンスの底にも カビなんて見た事が無かった。
今まで風呂が綺麗な状態なのが当たり前だと思ってた自分が恥ずかしい。
考えを改め、今はなるべく真琴の負担を減らす様に俺も協力している。今更だけど 真琴、許してくれ。
お世辞にも広いとは言えない浴槽は 真琴と密着するのに都合がいい。交代で頭と体を洗った後、二人で湯船に浸かり、真琴を足の間に挟んで後ろから抱き締める。真琴の肩に頭を預け それから まったりする。やっぱり湯船に浸かると体の芯から暖まる。真琴と一緒だから特に。
特に会話が無くても それも何故か心地いい。
同じ無音でも あの時とは全然違う。心が通じ合うって こういう事なんだな。
自分でもちょっとウザい位 真琴にまとわりついている自覚はある。だけど俺はもう気付いてしまった。
真琴が側に居てくれる幸せが、
真琴と暮らせる日々こそが、奇跡だって事に。
"当たり前にある幸せ" なんて物は この世に一つも存在しねえ。全ては小さな奇跡の積み重ねなんだ。
幸せな日々を過ごすのも、一瞬で失うのも、全ては自分次第だ。
俺は二度と失敗を繰り返さない。
その為の努力なら惜しまねえ。
何千何億という人が居る中で 真琴に出会えた事。
恋人になれた事。
そのどちらも俺は何一つ苦労なんてしてねえ。
同じ高校のクラスメートになったのは偶然だし、恋人になれたのは真琴が頑張ってくれたおかげだ。
俺はそれに胡座をかいて もう少しで取り返しのつかない失敗をする所だった。真琴が頑張ってくれたおかげで今の幸せがある。
これからは俺が頑張る番だ。
俺はそっと左手に光る指輪に手を添えた。
アクセなんて付け慣れねえ俺は最初微妙に違和感もあったけど、今ではすっかり手に馴染んでいる。
こんな物で繋ぎ止めれるなんて思っちゃいないけど、真琴に少しでも安心して貰いたかった…
…ハズなんだけど、今では 真琴の左手に光る指輪を見て 俺が安心している始末だ。…ウケる。
真琴への想いは 日に日に募る一方だ。
「匠ー?」
物思いにふけっていると 真琴が俺を呼んだ。そういや、ここまでコーヒーのいい香りが漂っている。
「おうー。」
すぐに戻り ソファーに腰掛ける。
テーブルに二つ並んだコーヒーからは ユラユラと湯気が立っている。旨そう。
真琴は隣に座らず 冷蔵庫を開けてゴソゴソしている。
「おっ、何かあんの?」
毎回じゃねえけど、真琴は時々コーヒーと一緒に甘い物を食う。俺はそれを一口貰う。
「うん、美味しいかどうか分かんないけど…。」
そう言って俺の前に何か置いた。
透明の容器に淡い綺麗な黄色。表面には焦げ茶色の層。これって…
「プリン?」
「一応…。」
「え?もしかして作ったのか?」
「うん、美味しく出来てるといいけど…。」
照れてるのか、少し頬が赤い。
そういや、この間 風呂場でプリンの話したな。俺は基本 甘い物は得意じゃねえけど、小学校の時 給食に出てくるデザートのプリンは好きだった。でも子供ながら カスタードの量に対しカラメルソースの量の少なさに納得がいかなかったって話を永遠としたんだったよな。真琴は笑いながら『大人の事情じゃない?』って楽しそうに返事してたっけ。
「この間 匠のプリンの話聞いて プリン食べたくなっちゃって。」
整った顔をヘナッとさせて笑う真琴。
俺は今すぐお前を食べたいよ。
「それにしても真琴…、」
目の前に置かれたプリン、1/3 はカラメルソースじゃねえか!まさに理想のプリン…?
「た、食べてみて?」
隣に腰掛けた真琴を抱き締める。あんな たわいごと覚えてくれていて、俺の為に作ってくれたんだな…と思うと 堪らなく愛しい。
俺はこうして毎日真琴に好きを積もらせる。
「た、匠?」
「有り難う、すげえ旨そう。」
スプーンで一口すくってみると カラメルソースが丁度いいとろみでカスタードに絡んでくる。溢さねえようにパクっと食べると ほろ苦いソースと甘さ控え目のカスタードが口の中で混ざり合い、溶けていく。今まで食ったどんなプリンよりも旨かった。これなら一個ペロッと食えそう。
「すげえ旨い。」
素直な感想を言うと 真琴は嬉しそうにヘナッと笑った。
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