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閑話休題1(早苗さんと恵さん)
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「お邪魔しまーす」
「早苗ちゃんいらっしゃい!」
「恵ちゃんこれ作ってきたの!一緒に食べましょう?」
「あら?この匂いアップルパイかしら?早苗ちゃんのアップルパイ大好きなのよねーありがとう!とっておきの紅茶淹れましょ?」
「本当に?楽しみー」
篠原宅に多喜の母親である早苗が遊びに来た
この二人は大抵お昼ご飯を一緒に食べながら夕飯の準備をする時間になるまでお喋りしたり映画やアニメを観たりと趣味の時間を共有しているのだ
元は息子同士が仲良くなり家が近い事で互いの家を行き来している内に親同士も仲良くなった、と言うパターンである
年も近く気が合う二人はいつの間にか幼い頃からの親友かの様に気心の知れた間柄になった
この二人の夫である信明と裕史も波長が合うのか今ではすっかり飲み友で仕事帰りに二人で軽く一杯やってから帰宅する事もよくある
すっかり芹澤家と篠原家は家族ぐるみの付き合いなのだ
「あらー?この紅茶凄く良い香り」
「本当に?頂き物なんだけど早苗ちゃんと飲もうと思って楽しみにしてたの」
「まぁ恵ちゃんありがとう」
後で茶葉お裾分けするわね?なんて言いながら恵が手際よくアップルパイを切り分ける
食後のデザートを二人でゆったり食べながら会話を楽しむ姿はあたかも女子高生の様である
「それにしても、ついにあの子達付き合い始めたのねー」
「たーくんの粘り勝ち…って感じかしら?」
「本当に翔悟のどこが良かったのかしら?親の私から見ても普通のどこにでもいる男の子よ?」
「あら?そんな事無いわよ?たーくんが好きになるのも分かるわ
物腰も柔らかくてあの年なのに包容力まであるもの」
「親の目からは分からないものなのかしら…でもこれで私達の計画に一歩近付いたと思わない?」
「…実は私もそう思ってたの!」
「最初に多喜君からうちの子を好きだって聞いたときにね正直歓喜したのよね!あら?これって凄い事だわ!って」
「私も真っ先にあの話が頭を過ぎったの!」
「やっぱり早苗ちゃんも?」
「子供達の誰かが付き合って結婚までしてくれたら私達って家族になれちゃうわよねーって言ってた半年後位にたーくんがそんな素敵な相談してくるものだからねもう、もうどうしようかしら!ってなったの!」
「これで老後は夢の3世帯住宅が叶いそうだわ!」
驚く事にこの二人、旦那にも内緒でこんな計画を立てていたのである
お互いの子供同士を結婚させ、名実ともに家族になりたい位に仲が良いのだ
事の起こりは恵が何気無く言った「私達って生き別れの姉妹じゃないかって思うの」と言う発言から来る
もちろんそんな事実は無いのだけれど、そうだったら素敵だわ!と言う発想のもと「お互いの子供が結婚したら良いんじゃない!」と言う結論に至ったのだ
真っ先に候補に上がったのが翔悟の姉である雪乃と多喜の組み合わせだったのだが、日頃の二人の態度から見てもまずそれは無いと意見が一致した
その次が多喜の弟の義隆と雪乃である
この二人に関しては義隆が雪乃の事を好きなのは親の目から見ても明らかなのだが、雪乃が全く義隆を意識していないのでこれからの展開に期待と言う考えに落ち着いた
そして最後に多喜と翔悟である
以前世間話程度に早苗から聞いた多喜の小学生時代の「しょーちゃんと結婚出来ないの?」と言う可愛らしい発言を思い出した恵が、この二人も有り得るわよね?と言い出したのである
早苗に至っては翔悟君がお嫁さんになるのかしら?それってとっても素敵!なんてとんちんかんな事を言いながらニコニコしていたのだ
「もしよっち君とうちの雪乃が結婚したら4世帯住宅にしなきゃよね?」
「4世帯ならいっその事アパートみたいな作りにした方が良いかしら?」
「そうね…下の階は私と早苗ちゃん夫婦が住む2世帯住宅にして、2階はアパートみたいにしっかり別れた造りになってるのも良いわよね?」
机に紙とペンを置いて二人で計画を練る
「ここを繋げたら玄関からじゃなくて部屋の中から行き来出来ると思わない?」
「早苗ちゃんったら天才だわ!」
「でもそうなると問題は土地よねぇ…」
「そうなのよね…今のままどちらかの土地に建てるにしてはスペースの問題があるのよ…それに子供達が将来何処で仕事をするかもまだ決まってないもの」
「地元から離れた所かもしれないものね」
「でも旦那の定年までまだ20年以上あるし、ゆっくり計画を練りましょう?」
「この前信明さんが今後転勤の可能性は無いって言ってたから安心して計画が立てられるわね」
「良かったー!早苗ちゃんと遠くに離れるのは寂しすぎるわ」
こうして二人の夢の4世帯住宅の計画は着々と進んでいくのであった
「翔悟と多喜君の志望する大学って県外じゃない?同棲の準備も必要よね?」
「そうなのよ!」
息がピッタリな二人だった
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